ウレタンの話  Polyurethane foam

一般に市販されているバイクシートはモールド品と言って、型の中にウレタンを注入して発泡させたものです。
型の中で発泡させると下の写真のような発泡の仕方をします。
IMG_7821バイクシートの断面です。カステラみたいですね。
1がスキン層と呼ばれる部分です。ほとんど発泡していない皮のような状態です。
2の部分はスキン層から少しはなれているので発泡していますが、泡の密度が高いです。
3の部分がシートの大部分を占める発泡です。
型の中で圧力をかけながら発泡するのでこのような発泡の仕方になります。
ちなみにyoutubeにモールドウレタンの成型風景がありましたので転載します。これはソファのクッションのようです。
YouTube Preview Image
IMG_7822ウレタンのアップです。
上からスキン層で、その密度違いが分かると思います。
こうしたことから、アンコ抜きなどでスキン層とその下の部分を取ってしまうと極端に柔らかくなってしまう場合があります。
これらの当社における対策については最後に書きます。
ちなみに当社がシート改造で使っているウレタンもモールドウレタンです。
以前は高弾性、高密度のウレタンを使用しておりました。
IMG_7823これが以前使っていたものです。密度が高く程よい弾性を持っています。
しかし、どうしても気になる所もあり新しい素材を探していた所、オリジナルウレタン製作に協力していただける会社が現れて、現在はモールド型でウレタンブロックを作り、そこからスライスしたウレタン板をシート改造に使っています。
IMG_7825これまでより密度が高く、弾力も今までのような強反発ではなく沈み込むほどに弾性が上がる感じです。しっとりモッチリというか、ウレタンソムリエではないのでうまく表現できませんが、今のところこれがベストかと思っています。
モールド品でありながら、スキン層は取り去っておりますので硬度や弾力特性は一定です。予め高い硬度と弾性に設定した当社独自のレシピと言う感じですかね。
このウレタンを使ってシートの形状を変えたりするのですが、形状が出来上がって終わりではありません。
IMG_7826最後にこの白い防水コーティングを全体に施します。
簡単に言えば、後からスキン層を作る感じです。
これによってウレタンへの水の浸入を防ぎ、弾力特性を更に高め、ウレタンの寿命も延ばします。
なので、先ほどノーマルシートをアンコ抜きしただけでやわらかくなってしまうと言う対策として、削ったウレタンにこのような防水コーティングを施して、柔らかくなるのを防ぐ加工をしております。この防水コーティングは当社で行なう全てのシートにしております。
IMG_7827ちなみに余談ですが、こうしてシートを削るとなかなかうまく表面を綺麗にすることができません。細かな凸凹ができてしまいます。
根気良く削ればかなりのレベルに仕上がるのですが・・・
IMG_7828矢印に挟まれたウレタンは密度の低い5mm程度のウレタンです。指で押せばつぶれてしまうくらいのスカスカのウレタンです。
これを凸凹したウレタンに貼り付けてカバーを張ると(写真で言うとオレンジのラインがカバーです)、見た目は綺麗なのですが・・・

が・!・・なのです。

家具では良く使う方法です。家具ではいいのです。
しかし、バイクシートの場合、たった5mmのふわふわのウレタンのおかげで、座り心地の違和感を感じるため当社で行なっていません。
これは好みなので、この加工がダメと言うことではありません。
私は嫌いなのでやらないと言うだけです。
ビニールをウレタンに巻いて防水というのも同じです。
当社が使用している衝撃吸収材もそうですが、高機能な材料をその性能を発揮できる組み合わせで加工することが一番大事なことだと思っています。
今使っている材料は今一番ではありますが、常に次の材料を探しております。
現在テストしている材料もあります。
まだまだ、奥が深く面白い仕事だなと思っています。