財布を落とした

自虐ネタというわけでもなく、今後の戒めのために書いておこうと思う。

仕事の打ち合わせが終わり、東京駅で予約した新幹線の時間を待つ間、会社の休憩時間にみんなに食べてもらおうとお菓子を買った。

ホームまで歩き、売店で車内で食べる軽食を買おうとバッグの中を見ると財布がない!

無いわけがないのに無い!

一瞬スラれたのかと思ったけれど、なんとなくそれは考えにくい。
お菓子と一緒にバッグの中に財布を入れるときに、財布だけ私の視覚から外れて外に落ちてしまったのだろう。
今まで財布を落とした人を見たことはあるけれど、落とした自分を見たことがないので、そんなありえない状況を理解するのに少し時間がかかった。

「改札で慌てる切符をなくした人」というモノマネを見たことがあるが、まさにそれをいま自分がやっている。

ポケットを全て探り、バッグの中を見て、これを3回ほど繰り返したけれど、切符のように隙間に入るようなものではなく、二つ折りのしかも出張と言う事でいつもより少し余分にお札が入ったどこかに隠れるにはかなりの技術を要するほどのしっかりした財布であるから、ポケットなどは探らなくても上から触れただけでないことは明らか。

慌ててスマートフォンからfacebookを開いて、
「緊急!拡散希望 駅で財布を落としました。 黒い二つ折りのナイスな財布です」
と書き込む馬鹿なことはしなかったけれど、気持ち的にはやりかねないくらい慌てた。

まだその時、手には車内で食べようとした「おつまみちくわ」は会計しようと握ったまま。
どこに戻したか覚えていないけれど、ちくわを棚に戻し先ずは先ほどお菓子を買った売店へ力なく向かう。向かう最中、すれ違う人の多さに絶望感のみがのしかかってくる。こんなところで財布を落として戻るはずが無い。
構内の白い床に落ちている黒いコードバンのなんとも言えない艶やかな財布に気づかないほうがおかしい。そう思いながら、売店まで戻ってきたが、財布落ちてませんでしたか?とレジの人に聞くでもなくお土産のお菓子を買い求めるスーツを着た、私と同じで出張帰りであろう人たちを眺めていた。

あーあ、あの人たちは財布なんて落とさないよなぁ。と、普段は思うことも無いようなことをぼんやり思いながら次のことを考えていた。

とりあえず岐阜まで帰る切符はある。車を停めた駐車場は800円だから、落としていない小銭入れ(普段使う財布に小銭入れはついていないんです)に800円以上あることを確認して、免許の再発行、クレジットカードの使用停止などめんどくさい手続きについて考えていた。乗るはずの新幹線もそろそろ来たようだから観念して帰ることにしよう。
いや、その前に落し物センターにひょっとして届けられて・・と思った時!

♪ お客様のお呼び出しを申し上げます。
岐阜からお越しの ノグチエーイチ様 (読みはひでかずなんだけど、英一をヒデカズと読む人はいない) お預かりしているものがありますので落し物センターへ・・・・

おぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

ガッツポーズは1年前のラリーを完走したとき以来だな。
人目も憚らず、っっしゃ!って言ってしまった。
落し物センターは改札を出ないといけないと言う事で、持っていた切符を見せながら「今放送で呼ばれたノグチです」って、ちょっと俺は特別な人なんだから早く通してよ的な態度をとってしまった。ごめんなさい。興奮してしまってたんだろうと思います。何で少し威張ってんのおまえ、何か当選したの? は? 何か特別な人なのキミは。
イイエ、サイフヲオトシテ オオアワテノザンネンナ46サイカイシャインデス。
そんな感じだったと思います。でもそのくらい興奮してたんです。
落し物センターに、慌てた素振りを見せないようにしている超慌てた私が入っていくと、直ぐに察した係の人が、少しにやけた顔で「どうされました?」「今放送で呼ばれたのぐちです」「どうされました?」「財布を落としました」「どんな財布ですか?」「黒の二つ折りです」
ハイ正解!みたいな感じでさっきまで私のバッグに入っていた財布を差し出してくれた。
「一応中身をあらためてください」「良かったですねぇ」なんて言われつつ、届けていただいた人にお礼しなきゃとその旨を伝えたら「大丈夫ですよ、職員が拾って届けただけなので、お礼の心配はありません」だって。
もうね、日本万歳!いや、海外でも無い事もないだろうけど、その確率は経験からすると低いからね。
何度もお礼を述べて財布を受け取り、脱力したまま新幹線で帰りました。
あー良かった。とっても大事な財布だったのでほんと良かった。
これからは気をつけなきゃ。

どーでもいい話しにお付き合いいただきありがとうございました。

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