シートの防水 タックロール、ダイヤキルトの防水

 

先日、当社で加工されたシートをお使いのお客様から、製作後約60,000km使用したし、先日雨の中を走って水が入ってしまったようだから、一度メンテナンスもかねて見て貰いたいというご依頼を受けました。
結論から言えば、60,000km走行したシートの防水は全く問題なく、シートウレタンの形状にも変化はなく、すべて正常でした。
お客様が言われる水が入った状態は、タックロールのウレタンに入った水でした。

例えば、このシートのダイヤキルトや

このタックロールも以下のような構成になっています。
シートカバーにこのような装飾を施す場合には、ウレタンを挟んで凸凹を付けます。ウレタンの厚みによって凸凹の高さを調節しています。
シートウレタンにはEVAの薄いシートを全面接着していますので、雨の中を走ってもシートウレタンに水が入ることはありません。
しかし、縫製によってタックロールやダイヤキルトを施したシートカバーは、その縫製部分から水が浸入し装飾用のウレタンに保水します。
と言っても、いつまでも染み出てくる量ではないのですが、気になる方はこのタックロールを高周波ウエルダーで溶着することで解消できます。
このようにミシンで模様を付けずに熱でウレタンを圧着するので水の侵入はありません。

ウルトラスエードの場合は生地自体が保水するため、タックロールをウエルダーで行っても結果は同じです。
こうした装飾はミシンの糸目の美しさや、ウエルダーであればフラットバーの模様などで見た目が大きく変わってきます。

最初に戻ります。
届いたシートのカバーを外してみました。
防水のEVAは60,000km走行後も一か所のはがれも浮きもなく、しっかり密着しています。部分的なへたりも見受けられません。
カバーも縫製のほつれは当然なく、タックロール以外の部分には水の侵入がほとんどないこともわかります。ただし、中央の黒いタックロール部分はミシン目から浸みこんだ水分で少し濡れています。
これは、はがさなくてもそのまま放っておけばやがて乾燥するレベルです。
乾燥後に再度張り込み。

先ほど書いたように60,000km走ってこのレベルなので、水の侵入を考えるより自由にお気に入りのデザインを希望していただいたほうが良いかと思います。

いろんなデザインのシートがここでご覧いただけます。
ノグチシートのインスタ

 

 

フローティングターンがしたい!シートのアンコ抜き。

少し前のことですが「フローティングターンをマスターしたいけれど、そもそも軸足が地面に届かないからお話にならない」という相談を受けました。
ちなみにフローティングターンは下のyoutubeで観るようなやつで、オフロードバイクで山の中で遊んでいるときにこれが使えるとかっこよく見えるし、実際かっこよく上手い人の称号が貰えます。


マシンはKTM150XC-W 2017
依頼人の身長は 157cm
シートのみでどこまで足つき性を向上させることができるかなので、車体の写真を眺めるけど絶望的に厚みがない。どうしたものかと悩む。

単純な考えで「じゃぁシートのウレタンを取っ払うレベルまで下げたら良いのでは?」と思われがちですが、それをやるとどうなるか。
これはノーマルの状態で跨ったもの。
ギリギリ片方のつま先は地面に着くが、腰の位置は中心からずれてしまっている。
ウレタンをシートベース付近まで削ってしまうと、目線は低くなるけれどシートの幅がノーマルよりも広くなってしまい、股間が開いてしまいます。
左の図はシートベースまであんこ抜きをした図と想像してください。
右の図の赤いラインがウレタンを残したままサイドをシェイプした図となります。見てわかる通り、低くなったにもかかわらず強制的に足が外に出されて、足つき性というか足の出しやすさが阻害されています。
なので、単純に削るだけでは低くなっても足つきが良くならないことになってしまいます。

今回のテーマはフローティングターンをするための「踏ん張れる足」を作るためなので、それに特化したシートにしてみました。
シートの前部のアップです。
左がノグチシート  右がノーマル。
ノーマルがかまぼこ形状に対し、ノグチシートは高さは同じながら上面を絞った台形の形状となっています。
座面幅の違いはこの写真でわかるかと思います。
シートのセンターの高さはノーマルと同じままです。
着座部分の座面の幅も同じです。なので、コーナー立ち上がりなどの着座姿勢でのトラクションをかけやすい幅となっており、前部はエッジを立てたシェイプによってコーナーでのホールド感の向上にも役立ってます。
高さを変えないこのシェイプの結果はというと
まぁ撮り方によっては「やらせじゃないの?」と言われそうですが、左のノーマルに比べて右のノグチシートは腰が中心にいて、腰が入ったまま足が着くようになったと言うことになります。
これだと、腰を入れた力強いフローティングターンができる!かも!!!
と喜びの感想をいただきました。
平地では、まだ不安なので段差を利用して練習中の図。
そして、結局これが平地でマスターできたかどうかは謎のまま・・その後聞いていません。
先ずは挑戦するという、やる気になるシートができたことは確かです。

今回は薄いシートのオフロード車の話でしたが、これはどのバイクにも応用が利く足つき性向上の技法です。
ただ削って低くするだけではなく、乗り心地も残しながら安心できる足つきが得られるご提案をさせていただきます。

 

 

モトグッチV7の張替え MOTO GUZZI V7Ⅲ

モトグッチV7の張替えです。
元はこの車両ですが、タンクの塗装をすると言うことで、それに合わせたシートカラーに変更したいと言うご依頼でした。


ウルトラスエードのインディゴとネイビーを組み合わせて、ステッチはタンクに合わせたオレンジ、座面のタックロールは2本ステッチを入れることで凹凸をより強調させています。

MOTO GUZZIのロゴは刺しゅうで入れました。


ウルトラスエードは起毛によって、見る角度で明るく見えたり暗く見えたりします。

ご依頼いただきありがとうございました。

 

 

 

ノグチシート オリジナルウレタン

ノグチシートのオリジナルウレタンを作り始めてちょうど10年になります。
オリジナルのウレタンを作るにあたって、先ず難しかったのが作ってくれるところがない。
当社が発注する量なんてメーカーにとっては利益のある仕事ではないので、それを見つけるのが大変でした。
大手のメーカーに問い合わせても返事すら来ないのはざらで、担当者に話ができても、私からの要望が多くて最後には「・・うちでは難しいですね・・」と話が終わるパターン。
いやいや、はっきりと「儲からないし、面倒だからやりたくないです」と言ってもらったほうが気が楽です。できないのではなくて、難しいならなんとかなるんじゃないですかねと思ってしまうのです。
あきらめが悪いので、いろいろ当たっているうちに今のメーカーに行き当たり製造をお願いしています。
当社専用の金型を作り、「難しい」薄物のスライスも工夫してやってもらっています。オリジナルウレタンは今までミディアムとハードと2種類の硬さで作っていました。
その使い分けは用途や好みにもよって様々ですが、この10年で自分自身で試してきた結果と、ダカールラリーや当社で改造したお客様の感想を踏まえて、オリジナルウレタンの硬さを1種類にしました。
いろんな硬さを用意できればいいのですが、たくさんあってもお客様が選ぶことはできないと思います。
今回1種類にしたこの硬さに関しては、私自身がラリーで使用したり、ロードバイクでロングツーリングしたり、プロライダーのハードな使用においての感想や劣化具合を総合して決定しました。
オリジナルウレタンで作ったシートで7日間毎日乗り続けるラリーや

のんびりと1500km程度ツーリングでシートを試したり・・。

ちなみに下の写真はダカールラリーで使用したシートを半分に切って、ウレタンや衝撃吸収材T-NETのへたりなどのチェックをした写真です。


ウレタンの接着面や、防水の接着面などを見るだけで貴重なデータがレース後のシートウレタンから得ることができます。
市販車のシートウレタンに硬度の違うウレタンを張り付けて改造するわけなので、硬度や密度の違いで接着面に問題が起きたり、素材そのものが破壊されることもしばしばあります。なので、世界一過酷なラリーで使用したシートの分解などは、普通では手に入らない貴重なデータとなります。

今までこのブログで何度も「シートは硬いほうが良いか、柔らかいほうが良いか」について書きましたが、結論は出ていません。
しかし、基本的にノグチシートが提供するシートは、私にとって一番具合のシートなのです。お客様に喜ばれるかどうかは、作ったものを乗ってもらわないとわからないというのが現状です。なので、先ずは私が快適だと思うシートを作ることが製作する上での最低条件だと思っています。
それが、今回の1種類に絞ったウレタンの硬さとなります。
あとは高さやカバーのデザインなどお客様の希望をつけ足していくことで、よりお客様にご満足いくシートになると思っています。

快適なシートについて考える
と、以前のブログにも書きましたので参考までにどうぞ。

自作される方も、このウレタンは材料販売していますので、ご注文いただければ1枚から販売します。