ピットの風景 BAJA1000

1000マイル走るにはガソリン補給はもちろんのこと、オイルの補充やタイヤ交換、ホコリでつまったエアクリーナーの交換など一定区間でのピット設置が必要になる。

個人で参加する場合そこまではできないので、それをサービスとしてやっている会社があるので事前にサービスを申し込む。BAJA PIT やMAG7、JCRもPITを設置して一般ライダーのサポートをしています。なので、これらのサポートを頼めば、後は自分たちで数回のライダー交代の場所を決めて、サポートカーを先回りさせればいいわけです。

バイクの速い人たちは一瞬でガソリンが補給できるようにタンク給油口が改造してあり、そこに補給タンクを差し込むことで10秒かからず満タンにできます。

トロフィートラックなども同じで給油口はこんな感じ

そして補給用タンクは・・

右にやぐらで組んだ上に200-300Lの大きなタンクが乗ってますね

こんな給油車もありました。トップチームは給油もタイヤ交換も一秒を争ってますのでこのような給油システムをとっていました。自由落下でも、この高さからだと給油時間も早そう。

サポートするライダーのリストと、それに対する通過時間や交換部品のチェックリスト。

ピットにはバイク用の補給だけではなく、ライダーへの水分や食料補給もあります。ピットの人たちも場所によっては48時間その場所で待っていなくてはなりません。時間が経つとピットも暇になってくるのでバーベキューが始まっていたりして、そんな時に辿り着くライダーなどは「オイ、先ずは飯でも食っていけ!」なんて言われることもあるそうです。

ホットパンツにウエスタンブーツのねーさん・・・。この子、綺麗でかっこよかったなぁ。
こんな子が待ってるピットなら頑張りも2倍かな、いや3倍はいくね(^^)

様々なピットがあって面白かったです。

 

1x CRF450X BAJA1000

優勝し続けるマシンとはどんなスペシャルな物なのかと細かな所を眺めてきました。
レースの前々日にスタートから80マイルほど行ったコース上でマシンの最終確認が行われ,それに同行してきました。現場にはこのレース区間を受け持つコルトン・ウダルが先に到着していました。

はじめまして、シート作った野口です。なんて挨拶をして、後は一歩下がって見学。(この日、風がビュービュー吹いて気温10度くらいだったかな。寒かった・・)

当たり前だけどセッティングは既に出ているし、今日はフロントフォークをどちらかに決めるだけの最終判断のようでした。

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で、こんな感じ。スタッフもライダーも、終始冗談言ったりして和やかムード。
そんな合間に気になるところを質問してみるんだけど、あれもこれもそれもノーマル。
もちろんエキパイやサイレンサーなどの変更はあるけれど、誰でも購入できる物と言う返事。
チェーンも同じ。1品物といえば、トゲトゲに尖って凶器のようなステップ、オイルクーラー付きのラヂエター・・HRCと書かれたボルト類が目に付くけど、これも一般で買える物だしそこは別にHRCでなくてもいいのではと言う感じ。
この燃料ホースやラヂエターホースに巻いてある金色のテープは?うーーーん、飾りのような・・。ラジエターに特別なガードもなければ、レバーもノーマル・・。

なんと言うか、世の中にあるCRF450Xの中の一番完成されたのCRF450Xと言うべきなのかな。とにかくノーマル部品が多いので、理由を聞くと「壊れないから」「壊れないから変えない」「信頼性が優先」だそうです。

グリップが少し削ってあった。こうした、ほんの少しの積み重ねが速さに繋がるんだろうな。

調整終了!となって、コルトンはまたプレランバイクに乗ってコースに入って行きました。

さて、1xのマシンはサンクレメンテと言う海の綺麗なところにあるファクトリーで製作されてました。ここも12月に引越しをするっていってたな。
メキシコに出発前に、こんな街なんだってジョニーさんにグルッと案内してもらいました。

綺麗な海に静かな街。高級住宅地なんだろな。海なし県に住むものとしては憧れの風景だな。

出発前のチェイスカー。よく見るとサーフボードが乗ってるし・・エリックは釣竿乗せてた。
そう、出発前から緊張感と言うものを感じることがなかった。
スタート前日、ホテルの中庭でエリックと花輪さんが最終整備。と言うか最終洗車(^^)確かにいまごろあれやこれややってる場合じゃないですからね。エアクリーナーの取り付け見てて思ったんだけど、エアクリーナーが蝶ネジで止めてある。ノーマルと同じ方法。取替え回数が多いんだから、なんでもっと簡単な方法で 留めないのかと聞いたら「これが一番確実なんだ」「緩んだこともないし、取り付け不具合が起きたこともない。だから変える必要がない」とまた同じ答えだった。もちろん新しい部品や機工は試すそうです。でも、ノーマルに勝るものはなかなかでないので採用には至らない。そう考えるとですよ、いいですかここ重要(^^)。ここまでノーマルにこだわるチームが当社のシートを採用してくれたんですから、シートにノーマルより上の性能と信頼性を置いてくれたからだと思います。具体的にライダーからあれやこれなどとシートのインプレを聞くことはなかったのですが「なんかおかしい」となれば直ぐにノーマルに戻すはずなんだ。

みんなに注目されるマシンなのでとにかく綺麗に磨きます。フレームもブーツが当たって光っているところなどはサンドペーパー当ててならしていたし、隅々まで磨く。なので、シート屋としてはシートの汚れを丁寧に落とさせてもらいました。

そうそう、大事なパーツを忘れていました。バハといえばライトですね。最近ではHIDやLEDが主流となりつつあるけど、JCR/HONDAはこれ。ハロゲン200W。いつからこれなんだ?と言うくらい前から使ってますね。それにしてもでかいです。朝6:30スタートしてゴールは翌日のAM2:30.真っ暗の道もアベレージスピードは変わらずこのライトで飛ぶように走っていきます。
実際、通過地点で最終ライダーのティミーを見送った時も、驚くようなスピードで走り去っていきました。(見てたら走り去る瞬間に「問題ない!」って片手で合図していた。そのスピード域でちゃんと周りが見えているのも凄いな)

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スタートを待つマシンを前に記念撮影。
ちなみにエンジン横についている箱は参加者全員が取り付けるGPSを入れる箱です。

以上 優勝マシンについてでした。

バハでの工具巻 BAJA1000 Tool Roll

今年の初めにJCR/HONDAの花輪さんとエリックから、シートとは別に相談をされた工具巻き。
要望を聞き、多少のアレンジをしつつ作ったものを実際使ってもらっていた。
改良を重ねた結果、HRCのダカールメカニック全員に正式採用されるなど、ほぼ完成の域に達した。と、今日は自画自賛のブログです。
先のモロッコラリーで使用した工具巻をそのままバハ1000でも使うんだけど、見た感じ破れやこすれ、塗装のはげなどはなく、自分でいうのも変な話だけど耐久性はかなり高いです。

※工具の確認をするエリック

スピードが勝負のバハの現場では、聞いたとおり素早く工具を出して、素早く撤収する。これを現場で目の当たりにしたことで、納得することが多かった。写真に写っている工具巻きの後ろにも工具入れがあるけど、この工具入れだと真ん中の箱の中に入っているものは探さないといけないと言うめんどくささが発生するんです。1秒を争うのに探すと言う行為はストレス以外の何モノでもないですからね。

※花輪さんの工具巻き

ピットの現場に着く→テーブルを出す→工具巻を広げる→作業→工具巻をたたむ→・・・
この一連の動作が完全に流れているので見てて気持ちがいい。

新作のミニサイズ工具巻きも直接エリックに渡したことだし、今度はダカールの現場でどのように活躍するのか楽しみです。

ちなみにこの工具巻きは誰でも購入いただけます。材質、仕様などJCR/HONDA HRC が使用しているものと同じもをお買い求めいただけます。
来年バハを目指す方だけではなく。国内エンデューロなどでも使い勝手は同じかと思います。
ご注文お待ちしております!

 

色々食べたよ BAJA1000 Food

レースの話しはまだあるんだけど、やっぱり外国行く楽しみの1つは現地の食事。
メキシコに行けばタコスにビールだもんね。

ビールといえばコロナにテカテに・・。意外と言うのは失礼かもしれないけど、食べるものは全て美味しかった。まぁね、タコスも毎日じゃ飽きてくるけどね。食べた物の写真並べてみます。
初タコスは、ジョニーにおごってもらっちゃった。「何タコスにする?」って聞かれてもわかんないので、お勧めお願い!って頼んだら結構でかいのが2つも来てね・・(^^;)

タコスの屋台。トルティーヤに肉を挟んで渡されて、後は好きなトッピングを自分乗せます。

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ここのタコスが一番美味しかった。

スタートもゴールも海沿いなのでシーフードが美味しいです。これは蛸のガーリック炒め。

同席した人が食べた魚のフライ・・・30cmあったかな・・でかい。

エンセナダでは有名だっていってたな。底にはホクホクのポテトが入ってるんです。グラタンのような感じ。

レストランでもこうしてトッピングがついてきます。

ラパスで食べた海老とポテトのチーズ焼き。こんなデコレーションされて出てくるもんだから、まわりからじろじろ見られてね(^^;)はずかしかった。

ホットドッグはピットでも作ってました。一緒に食べようって貰って食べた。コーラとホットドッグとサボテンと乾いた土地!美味くないわけがないです。

屋台のホッドドッグも

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朝ごはんにしては多すぎる・・・

食後はアイスクリームで!色粘土だなこれ(^^)

サンイグナシオだっけかな、有名なレストラン。バハのステッカーやポスターがいっぱい。

ここも中に入ると

ラパスでは少しビクビクしながら小さなバーに入ってみた。カウンターの奥にいるおっちゃんがいい感じで美味しい生ビールが飲めた。

と、まぁこんな感じでごちそうさまでした!!!

チェイス!BAJA1000 Chase!

バハ1000より戻ってきました。憧れだったラパスの灯を最高のシチュエーションで見ることができました。

今回このような機会を与えてくれたJCR社長のジョニーキャンベルと今度のダカールでチーフメカをされる花輪さんには感謝申し上げます。ほんと、素晴らしい体験だった!
はじめて行ったバハは、普通に参戦すると見ることができない常勝チームJCR/HONDAの裏側を見てきました。

結果は先のブログにも書いたとおりJCR/HONDAは優勝し、16連覇と言う結果に終わりました。 16連覇と言うと、その圧倒的な強さから敵無しの土俵で戦っているように思われそうですが、なにがなにが緻密に計算された作戦とスタート直前まで続けられるプリラン(コースは分かっているので事前走行ができます)など、経験に基づいたしっかりとした準備がされています。

レースを支えるスタッフは多く居り、個人もサービスを受けることができるJCRのピットが20箇所あり、そこには1x用の万が一のトラブルに備えたスペアパーツが置いてあります。
ちなみにスペアパーツの1つとしてタイヤがあるが、リアタイヤはムースではなくチューブ!パンクのリスクがあるのになんで?と思う方も多いと思うが、JCRライダーのスピード域になると熱でムースが溶けてしまうんだそうです。

※交換したタイヤがこれ。って言うか換えるたびにこんな感じになってる。リムもグニャぁって。よくパンクしないものだ・・・

そして、 行く前に花輪さんから聞いていたチェイスカーと呼ばれるサポートカーが2台。「レースを見るのも面白いですけど、チェイスもなかなか迫力がありますよ。地味ですが・・」この車には精鋭のメカニックが乗り、交代するライダーも同乗します。タイヤ交換やライダー交代、夜になる頃にはヘッドライトの取り付けなど、重要なピット作業はこの2台が先回りをして、あらかじめ開設されているピットの人たちと一緒に作業をします。
そう!なんと、その車に同乗してきたんです!
いいのか?
行く前は適当にどこかのピットに下ろされてレース眺めることになるかな?なんて思ってたから驚きました。

先回りをすると言うのは簡単に聞こえますが、追いかける相手は平均時速90km/hで走るマシンなので、チェイスするほうも相当なスピードで一般道を走ります。一般道なので一般車も多く走っています。一般車と言うより様々な商品を運ぶトレーラーが多い印象でした。それらをどんどん抜いていかねばなりません。マッドマックスのエンディングシーンを覚えている方は分かると思いますがあのイメージです。先の見えない坂やブラインドコーナーをイケーーーーーーッ!!!って(^^;  2台で走っているので、先行するほうは対向車の情報を常に無線で後続車に知らせてバンバン抜いてこれるように情報を流します。
※一般道はこんな道ばかりではありません。峠越え、ワインディングなど様々なんです。

もし、1本しかない道路でトレーラーが道を塞いでいたら?チェイスする車が壊れたら?間に合わなかったら?と、もしもが発生した時にはその場で最善の判断ができるメンバーが乗っているので、もし何か合ったときでも即座に次の行動に移るそうです。その辺りが16連覇を支えてきたスタッフの経験がなせる技なんですね。実際、帰り道では事故で横転したトレーラーを見ましたし、そのせいで通行止めが続くのも見ました。

作業するピットに到着すると誰かが指示を出すでもなく、各個人がそれぞれ自分の担当するパートの工具を出したり、交換パーツを出したり、ピット作業が素早く行えるように段取りをします。
最初の作業の時もそうでしたが、そもそもスタッフのミーティングというものがないんです。花輪さんに聞いたのですが、やはりそうで、いわゆる阿吽の呼吸で動いているとのことでした。
ことあるごとに花輪さんが「ね、たいしたことしてないでしょ」と言ってたけど、この意味もなかなかなもので、他のチームが真似できるかと言うと、簡単にできるものではないでしょうね。
簡単にこなしているように見えるプロの作業ほど、真似してみると全然出来なくて簡単じゃないことくらい僕でも知ってる(^^)
※ライダーを待つJCRチーフメカニックのエリック。

サポートカーには無線、衛星無線、衛星電話、サポートカーの位置を知らせるGPSと、ハイテク機器が載せてあります。
ライダーも位置情報発信GPSを携帯しているので、その信号が定期的にサポートカーに届く。なので、今ライダーがどこを何キロで走行中とか、2位や3位との差はどのくらいだとかの情報もどんどん入ってきます。

サポートと言えばヘリコプターの存在も大きいですね。JCRとロゴが大きく書かれたヘリがバイクと一緒に飛びます。
ライダーとヘリ、ヘリとサポートカー、そして各ピットへ情報が常に流れます。
ピットで待っているとヘリが彼方から飛んできました。まだ音が聞こえませんが、山影から出てきたヘリを見ながら僕の頭の中にはこれが流れましたね。
ピット作業中は上空で旋回し、ライダーが飛び出すとヘリがついていきます。
※僕が乗った車です。

作業が終わればチェイスする2台も素早く撤収し次の作業ポイントに向かいます。
バハ1000は1000マイル(今回は1100マイル約1800km)を走る競技で、スタートしたら一気にゴールまで走る競技です。ちなみにJCRの予定ではゴールは20時間後のAM02:30。当然サポートするほうも同じように舗装路を行きます。チェイスする車は第2ライダーと共に、前日に200kmほど先に進んでいるとは言え、ピット作業をするので当然ライダーより後ろになってしまいます。当たり前ですがレースコースは一般道を縫うように走るので先回りが可能となります。

ピットでの作業の模様を撮ったのでご覧ください。
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手伝える空気ではないし、初めてのやつが手を出すものでもない。部外者が思いつきで何かするとトラブルの原因になる。
しかし、次のピットでは人手がなくて「野口!俺がタイヤを外すから新しいタイヤをこうやって(ジェスチャー混ぜて)渡してくれ」ってメカのT.Jに言われてスゲー緊張しながら手伝いました。
そう!あのJCR/HONDAのピット作業を手伝ったのです!ほんの少しでも手伝ったのだから、やったと言って良いのだ!なんかうれしーーー!

レースは600マイルを過ぎても2位とは数分しか差がついていない。数年前は30秒差で優勝したこともあり(1000マイル走って30秒差ってのもすごい話だな)、近年のレース展開は見てるほうは面白いけど、レースをしてるほうはドキドキの僅差での勝負が続いている。(実際今年のバハ1000の前に行われたバハ250、バハ500ではKTMとカワサキに負けている)
今回も2位のカワサキは終盤近くでは1分以内の差まで縮めてきていた。
レースも終わりに近づき、無線やGPSからの情報で、昨年はJCRのライダーだったKTMのクインが転倒骨折で病院に運ばれたとか、カワサキに重大なエンジントラブル発生と伝えてきた。車内はそれを聞いて大喜びするでもなく、いままで来た通り自分達の任務を遂行するために、淡々と ゴールのラパスに車を走らせていた。淡々と、ほんとこの言葉の通りスタートしてからゴールまでその調子だった。陽気でテンション高めのアメリカンを想像してたのに、どちらかと言うと沈着冷静なスタッフの集まりでした。

「これがバハです」

ゴールのラパスが近づいてラパスの街の灯りが見えてきた頃、花輪さんが後部座席に乗る私に振り返ってこう言いました。

※先に見える明かりが「ラパスの灯」ゴール手前で最終ライダーのティミーの通過を待つ。ここまで来てもまだ安心はしない。何かあれば直ぐに対処するのがメカニックの使命なんだ。後10分、後五分、もう直ぐ来るよと無線が入ったとき、ティミーはウイリーでサポートカーを抜かして走り去っていった。体中の毛が抜けるかと思うくらい鳥肌が立った瞬間でした。

走ってる人もそうだけど関わった人たちすべてにバハがあるわけで、今度来るときはまた新しいバハを発見すると思います。
1000マイル。優勝チームの20時間のドラマはあっという間だった。短いようだけど僕にはこれ以上の経験をしたことがないほどの濃密さがあったし、優勝チームたるゆえんを多く見る事ができた。やっぱり来て良かった。なぜこのパーツなのか、なぜこの処理なのか、なぜこのシートなのか、全て理由があるんです。それは来て見て感じないと分からない事なんです。

制限時間45時間  自分が走ったら制限時間内も厳しいのではないか・・・比べるのも失礼な話だけど、JCRライダーたちの桁外れの速さがよくわかる。でも、走ればバハがある。また憧れのレースが1つできた。

少しの間、バハで見てきたことを色々書いていきます