あるお客様からこんなバイクのシートの依頼を受けた。
XR500Paris-Dakar と同じシートが欲しい。
知らない人が見れば、なんかでっかいタンクが付いた古いバイクだけれど、古くからのパリダカファンが見ると、おぉーと声が出るくらい懐かしく、かっこいいバイクなんです。
正式には、XR500paris-dakarというバイクは市販されていません。
市販のXR500を改造しパリダカ専用車に仕立た物がそれになります。
当時のファクトリーマシンを再現するためにXR500に市販のタンクをつけただけじゃないの?と思う人もいるかもしれませんが、このマシンそうじゃないんです。
タンクを見れば一目瞭然。
市販車のXL250R Paris-Dakarのタンクではないし
XL600ファラオのタンクとも違う。
まさにこのホンダファクトリーマシンのタンク。お客様がどうやってファクトリーのしかも新品のタンクを30年経った今手に入れたのか興味は尽きないけれど、そんなことよりもあのマシンが目の前にあることで興奮しきりです。
しかも、お客様は憧れていた当時のこのマシンでサハラを走るだけではなく、ラリーに出場するということなのでシート製作も慎重に進めなければなりません。
と言っても、見本となる資料は沢山あるので。それをもとに新素材も使用しつつ製作しました。
シート完成の写真は最後にお見せしますが、シートを作るに当たって、この年代のマシンについて調べたくなって家の片隅にしまってあった雑誌を引っ張り出してみました。
懐かしい雑誌や写真が出てきたので少し紹介します。
1982ライディングスポーツ創刊号だって!33年前だよ・・・中一でこんな雑誌買ってたんだ。
そして月間第1号 第5回パリダカの特集も組まれてる。
クーーーッ。かっこいい!背景からするとパリのコンコルド広場かな。
シートのリアには小物入れが付いていますね。この頃のパリダカはまだまだライダーの持ち物が多く、背中に背負うと疲れるからシートやその他細かく分けて装備していました。
古い雑誌を見てると、ついついいろんな所にも目が言ってしまう。
チェコで開催されたISDEの特集もあった。この頃のISDEと言ったらトシニシヤマだったなぁ。
特集ページが切り取られていた。ここにあった写真はかすかに覚えている。中学生のときにバイク雑誌の写真を切り取っては部屋にいっぱい貼っていた。
ライディングスポーツの表紙かっこいい。カジバエレファントはオリオールかな。マルボロカラーのBMWはライエだね。しかし、すさまじいでかさのタンクだ。
今は見なくなったけれど、この頃はタバコ会社のスポンサー真っ盛りだったな。マルボロ ラッキーストライク ロスマンズ ゴロワーズはもう少し後かな。
サイクルワールドもパリダカ特集していて何冊か出てきた。表紙は汚れた英雄だね。ローズマリーバトラー♪
懐かしい雑誌に混じって自分の写真も出てきた
初の海外、初の海外ツーリング。オーストラリアンサファリラリーに同行するツーリングツアーに参加したときの写真。オーストラリアのアウトバックでテネレ600に乗る私。1989か・・20歳だよ・・ 砂丘はなかったけれど気分はすっかりパリダカで、自分が巻き上げる砂塵を何度も振り返って見ては、パリダカをいつか走るぞと想っていたのを覚えています。
かなり色褪せちゃってるけど、これは何度も読み返したな。
そして、これも懐かしい写真集。
1978年にパリダカをスタートさせたティエリーサビーネ(37歳)がヘリコプターの事故で亡くなった第8回パリダカの写真集。
これは高校2年のとき、鈴鹿8時間耐久レースの会場で売っていた。
この本のレポートを書いた中村洋さんがその場にいたのでサインを貰いました。
この時の事は今もはっきりと思えてる。「僕もパリダカ行きます」なんて生意気に言った記憶があり、サインしてもらった後にがっちり握手してもらったなぁ。
中村さんはプロのライダーではなかったけれど、当時はパリダカに出ている人は僕にとって全て憧れの人でした。
と、XR500の話からどんどんずれてしまいすみません。
パリダカの記事読んだり写真集見てると、誰かに話したくなることばかりで、1人興奮してしまって収拾がつかなくなるので資料の閲覧はこの辺にしてと。
さて、肝心のお客様のシートはと言うと
ノーマルのウレタンはベース付近まで削ぎ落とし、T-NETとオリジナルウレタンで整形。
お客様は足つきを心配される一方見た目がファクトリーマシンと異なることも嫌われたので、シートの高さはギリギリまで落とし、シート前部の角を若干丸くして足付き性を確保しました。これで後は防水コーティングをして張り込みをします。
座面にカンガルーの革を使いたいところだけど、入手困難なうえに今ではそれほど高性能とは私は思わない。オリジナルにこだわればそれなんだけれども、そこは臨機応変に。
なので、座面はウルトラスエード(アルカンターラ)を使用し、サイドはビニールレザーではなく黒の本革。これで当時の雰囲気は出たと思います。
中身はもちろん現代のホンダワークスと同じスペック。
これからナビゲーション機器が装着されてラリーマシンになっていきます。
お客様にはこのバイクで冒険の扉を開けてもらい、素晴らしいラリーを体験していただきたいです。
“I will take you to the gates of Adventure
but they are for you to open and defy fate” Thierry Sabine
Good luck!!!!!!