ダカール優勝者のシート DAKAR Winner’s seats.

ここに2つのシートがあります。
このシートは2020ダカールで優勝したリッキーブラベックのシート

これは今年2021ダカールで優勝したケヴィン・ベナビデスのシート。
2018のダカール後にいただいたものです。形状は今回もほぼ同じです。

もう一度シートを並べた写真を貼ってみます。
この2つのシート、ベースとなるシートは同じものです。
衝撃吸収材T-NETの挿入は同じですが、ウレタンの形状は大きく異なります。
見ての通りリッキーのシートは羽が生えたように左右に大きく張り出しています。
ケヴィンのシートはリッキーのシートに比べると、ノーマルのままのようにも見えますが、高さ、角度等変更が加えられています。
その他、バレダやコルネホも同じくシートの形状については細かなオーダーが出ています。
こうして並んでいるシート全ての形状が違うわけです。
トップライダーは数ミリの変化にも違和感を覚えるので、希望する形状の再現は重要なことになります。
毎回微妙に違う形になっていたらセッティングも出ません。
ライダーから「ここをあと10mm出してくれ」とか「ここの角度を5mmほど変えて」とか言われると、なかなかに大変なのですが、変更後に結果が伴ってくると、その甲斐があったと思います。
昔何かの雑誌の特集で「たかがシート・されどシート」という題名の特集があって読んだ記憶があります。
たかがシートでしょ?付いてればいいじゃない?という考えから、シートによってこれだけ変わるというような内容でした。まだシートがそれほどバイクの性能に重要な位置にいなかった時代の特集でした。それから積み重ねてきた技術がこうして世界の頂点にいるライダーに使われている現実を見ると、シートの可能性はまだまだたくさんあるのかなと思います。
優勝するマシンには、シートだけでも相当なデータとノウハウが詰まっています。
それを考えると2連覇したHRCのCRF450RALLYには気が遠くなるデータの蓄積があるでしょうし、なによりそれを操るライダーも勝つためのノウハウが積み重なってきた結果だと思います。
この結果と共に、これらの技術を皆様から依頼されるオーダーメードのシートに生かしていきたいと思います。