今年のダカールで完走を果たした池町選手のシートが来ました。
ダカールラリーで使用するという事は、一般的な使用から考えると数年分のストレスをシートは受けます。
シートは受けたストレスを吸収してライダーをサポートします。
そういうシートでありたいと30年以上続けて作っています。
丈夫で長持ち。だけでは意味が無いと思っているのがノグチシートの考えです。
「集中力を維持し続けることができる快適なシート」常にこれが製作の第一と考えています。
ワークスのようにスペシャルなシートを何個も用意できないので、極力トラブルが起きないようにシートを製作します。
今回のオーダーは「できるだけ足つき性を確保しつつ、あとはいつものように快適であれば良いので任せますよ」という事でした。
寒いうえに雨の多いステージでもあるため生地はグリップレザーの組み合わせとしました。
ウレタンの仕様は「HRCと同じ衝撃吸収材T-NETが挿入されたダカールスペック」です。
ではシートを見てみましょう。
これ以上はクッション性の確保ができないと判断したところまで高さを下げて、シート前部は足を出しやすく幅をシェイプ。
外観からは形状の崩れもなく、触った感じも良好。
シート先端にひっかき傷が少し。厚みのある非発泡レザーのおかげでひっかき傷が広がることはありませんでした。
ステッチの糸はパラフィンコーティングの糸を使用しているため、どの部分でも擦れて細くなったり切れている部分はありませんでした。当然縫製のホツレもありません。
生地の表面が見た通りざらついていますが、その生地に施した転写プリントは1mmの剥がれも浮きもありません。
チャックカード入れのマジックテープもしっかり生きてます。
これがバカになってしまうと、チェックカードが逃げ出してペナルティを受けることになってしまうので、マジックテープは知っての通りA面、B面がくっつく仕組みなのですが、それぞれをどちらに取り付けるかにも意味があります。
自分自身でラリーで使って出た答えなので間違いはないと思っています。
マジックテープの素材も砂、泥、いろな要因に邪魔されてもしっかりつくものを使用しています。
ウレタンがへたったり、張り込みが悪いと裏を見ればそれが良く分かるのですが、こちらも問題ありません。カバーは全体にしっかりとした「張り」を維持しています。
カバーをはがしてみました。
水の侵入はもちろんないですし、防水コーティングの剥がれや変形など全くありません。
どこを触っても、防水コーティングとウレタンはしっかり接着されたままであり、ダカール後とは思えないほどウレタンのクッション性は保ったままでした。
池町選手の感想は
「見た目の薄さからは考えられないほど快適でした」
と言ってもらえたので、一言「良かった」これに尽きます。
本番であり実験でもあるこうしたシート作りは、良い結果を踏まえて今まで以上にお客様へ強く提案できるものになってきます。
今まで全てが成功だったわけではありませんが、失敗も含めて今のノグチシートがあるのだと思っています。