今から2年ほど前、タペット調整とかスラストの調整とかやっている時に左シリンダーのスタッドボルトがヘリサートごと抜けた。
ヘリサートが抜けたので、そこにヘリサートを入れることができずに考えていたところ友人からエンザートで行けるのではないかと言われて、エンザートの外径の小さいものを入れて2年間はなんともなかったんです。
これがエンザート。
修理後は一度も調整や増し締めなどもせず、調子がいいうちは触らないを鉄則として守ってきました。
しかし、最近音がうるさくなってきたんです。
8000km近く調整もしていないからそのせいだろとヘッドカバーを開けて、先ずは増し締め。
???エンザートを入れたところだけナットが手で回るくらい緩んでいる。
もうこの時点で脇汗が止まりません。
でも、修理した時に怖くてあまり締めることができませんでした。規定は35n。多分それが原因かなと思って、とりあえず20nまで締めてみた。締まったけど何かおかしい。これ以上締めるとやばそうな気が伝わってくる。
とりあえず締まったことにしてタペットのクリアランスも調整して、土曜日にツーリングに出かけました。
それはもう天気も良いし、気持ちいいツーリングでした。
この日は400km走ったのですが、350km超えたあたりからガチャガチャ言い始めてきた。それもかなり大きなガチャガチャ音。
相当嫌な音だけどバイクは走る。走るけど明らかに問題が出た音なのは確か。
そして、翌朝ヘッドカバー開けたらこの有様。
完全に緩んでる。先日締めたばかりなのに・・。
あのいやな感触はやっぱり当たっていました。
すごいなと思ったのは、これ以上はカバーが邪魔をしてナットが落ちないんです。
と、感心している場合じゃなく、スタッドボルトを触るともうすでに抜けてくる気満々。なので、即バラシ。
どうしようもないのでシリンダー・ピストンと外して確認すると抜けるはずのないエンザートが抜けてきました。ここまでばらすのに15分程度と言うのがボクサーエンジンの強みかなと思う。
さぁ困った。
幸い予備のクランクケースはあるんです。
でも、載せ替えはとーーーっても面倒なので、なんとかこのまま直せないかと友人と相談。
前回は細い303型M10エンザートを使用したけど、今回は外径14の302型をダメ元で入れてみようという結論に。幸い前回の修理で2種類買ってあったんです。
なぜ前回それを入れなかったのかというと、ボルトの側面の肉厚が薄いためケースにクラックが入るのではと考え怖くて入れられなかったんです。
でも今回はダメでもいいやという事で、下穴13・1mmを狙ってドリルの刃も12・7 12・8 13と数本用意して、精密なドリル操作が必要なのにボール盤ではなくマキタのインパクトであけるという暴挙。
友人のガレージには太いドリルがたくさんあるのでありがたい。
穴を開けては掃除機で切粉を吸う。
下穴をあと0.2mm広げるか0.1広げるかと、フリーハンドでやってるのに真剣に悩む。
そしてエンザート挿入。
結構キツイ。そのきつさが安心に変わるんだけど、きつすぎてもケースが割れる原因にもなるし、最悪の状況を想像すると思い切ってグイグイねじ込めない。
けどやらなきゃいけない。
加工終了。
エンザートの脇の小さな切り欠きからオイルが出てくることも確認できた。
このバイクはこのスタッドボルトを伝ってヘッドにオイルを供給しているので、オイルラインもちゃんと確保しないといけないんです。
朝ばらして夕方組み上がったエンジンは、メカノイズもすごく静かで、これで10年は安心して乗れるようになったかな。超スピード修理だけど、時間かけても結果は同じなのでいいんです。こんな修理を受けてくれるバイク屋さんも無いだろうし。こんなに早く修理できたのは、ガスケット類のストック、エンザートのストック、道具、いろんな条件が完璧に揃っていたからです。
とにかく今のところはこれ以外のバイクに魅力を感じないので直って良かったです。最近発表されたR12G/Sは珍しくちょっといいかもと思いましたが、でもやっぱり100GSですね。
試運転してヘッドカバーをあけたら、ちゃんとオイルも回って来ていたので一安心。
とにかく直って良かった。また旅に出よう。