先ず、自分で試す。 バイクシート

新素材が手に入った時、先ず自分で試します。
素材のカタログスペックは、体感の次でいいと思っています。
体感具合が良かった場合の補足説明としてあればいい程度ですね。
自分が試した次は、自分ではなかなか行えないテストに入ります。
ラリーレイドや長距離ツーリング、長期間に渡るテストなどを、しかるべきライダーにモニターとしてお願いします。
これも、単純に「良いか悪いか」の評価を貰い、お蔵入りになる材料もあれば、他の材料と複合して再度テストを繰り返したりします。
今回は、メインで使うウレタン。
今まで使っていたウレタンよりも弾力があり、硬度もある。
加工性もよいので、お客様の選択肢を一つ増やす事ができます。
さまざまな要望に応えるためには、技術だけではなくそれに伴って素材もたくさんあった方がいいと思います。
テストをするときの基本は、ノーマル形状で表皮もノーマルに近いものから始めます。
ローダウンしたり、ハイシートにしたり、表皮を変えたりとすると、何が良くて何が悪かったのか分からなくなってしまします。この結果をベースに、次のステップに進みます。

前回のラリーでは、現在お客様に提供しているシートを自身であらためて確認できた。これはこれで問題は無い。
しかし、このままでいいと止まった時点で、技術は維持するが進化はありません。
焦って新素材ばかりを追いかけるのも良くないです。
良いと思う素材をじっくり料理して、いつでもどこでもその性能を発揮できる状態でお客様に提供しなければなりません。
しかし、今回はツートラ。
準備隊の映像がユーチューブに上がっていました。ちなみにBGMの優歌団は好きです。

・・・・うーーーん
マシンはKTMだし(いいわけではないんですよ)・・
座ったままで移動するラリーと違い、山や沢を映像のように進むわけで、トライアルマシンではない私の場合は、押して押して押しての連続かと思います。それでも、少しはテストができるでしょう。
テストのシチュエーションは、多ければ多いほうがいい。

さーて、行ってきます。

モンゴル ラリーマシンのシート表皮

今年もモンゴルのラリーに出場される方のシートを何点か製作させていただきました。
もうすぐ国内での車検ですね。
私もこのモンゴルのラリーは第一回目にアフリカツインに乗って出場し結果はリタイヤでした。
その後、オフィシャルでの参加を3年ほどさせていただきモンゴルの全てはないですが、かなり広範囲にわたって駆け廻りました。当たり前ですけどものすごく広いし、さまざまな風景を見て、さまざまな人に出会い、つかめそうな雲や降ってきそうな星を眺めとても楽しい経験ができました。
その時の様子はレポートにあります。
2005のレポート
2006のレポート
2007のレポート
少し思い出話を・・

はじめて行った時はここでラリーの一行が来るのを待って3日過ごしました。

初めて食べた時は、羊さんが口の中を土足で駆けまわりつらかったですが、2年目、3年目になるとそれがまたいい感じになってくるから不思議です。同じ羊でも場所によって味も違うんです。

チェックポイントで待っているとどこからともなく現地の人が来て、もれなく子供も付いてくるので3年目にはシャボン玉を持って行って見せてあげた。はじめてみるシャボン玉に喜んでいたなぁ。でも、乾燥した砂漠ではすぐ消えてなくなっちゃうんです。大きな空に消えるまでは飛びません。

自分が受け持つチェックポイントはGPSの座標で知らされていて大雑把な地図を頼りに、現場へ先回りします。GPSがこの近くだと示すあたりをさがすと、数ヶ月前に来た試走隊が置いて行った目印がありました。手のひらサイズのGPSが示された地球の一点に連れて行ってくれると言うのはすごいことです。

スタッフとして期間中のお風呂はまずは入れません。なので、川があれば体を洗い、井戸があれば体を洗い、こんなでかい湖に遭遇した時は貸し切りのでかいお風呂に入っている気分でした。あまりにもでかい湖で前を見れば水、振り返れば荒涼とした大地。見渡せば自分とスタッフのみと言う不思議な空間です。スタッフの一人が「初めてこんなに水を見た」と言う言葉が印象的でした。
思い出話の前置きが長くなりました。
本題 シートの表皮について。
先ずは写真をどうぞ。
モンゴルに出場したバイクの一部です。全てシートの表皮にエクセーヌやアルカンターラが使用されてます。




ラリーに限らず常に着座姿勢を取るバイクのシートは熱を持ち蒸れます。
なので、アルカンターラやエクセーヌを張る事でこれを軽減する効果が得られます。
毎日長時間着座するラリーなどではその効果がはっきり現れます。
炎天下にバイクを置いているとシートの表面がかなり熱くなり、熱いまま座るので汗をかく。湿ったお尻は擦り切れやすく、やがてそれが苦痛に変わって行きます。
これからの季節などは一般走行でも同じことが言えます。
ビニールレザーではないので雨が降ると水がしみて心配だと言う方もいるかと思いますが、当社ではウレタンにしっかりとした防水コーティングを施すので表皮に水はしみてもウレタンまでしみこむことはありません。
なので、濡れた場合は表面を乾いたタオルで水分を取り除けば短時間で乾きます。
蒸れず、適度な滑り止め効果と柔らかなタッチは一度使うとなかなか忘れられません。

シート表皮の素材や縫製の見本。

当社ではこんなカラー見本帳や素材のカットサンプルなど用意しております。
1つのシートにいろんな素材と縫製を施した見本もありますので、当社で打ち合わせをいただく場合は現物を見ながらなので、お客様のシートの完成図がよりリアルに想像することができます。


パイピングにC-01とD-01の組み合わせ。白でロゴペイント

シングルステッチにB-08とB-12の組み合わせ。ガンメタでロゴペイント

右アルカンターラ黒。左エクセーヌ黒。微妙に黒の発色が違います。前のマチがアルカンターラのパンチング。

アルカンターラ黒とビニールレザーの組み合わせ。
実際またがってみていただいて感触を体験していただけます。
その他のサンプルにはR1200GSアドベンチャーでロングツーリングで使用したアルカンターラのサンプルやダカールラリーで実際使用したシートなどがございます。
メールではわかりづらいと言う方にはぜひお越しいただいてサンプルを見て打ち合わせをさせていただけたらと思います。

エクセーヌやアルカンターラでの張替 バイクシート

最近依頼が増えたのがエクセーヌやアルカンターラを使った張替えですね。
雨の心配をされる方も多いですが、確かに表皮に保水はしますが、当社ではウレタンに完全防水加工を施しますので中まで濡れていつまでも水浸しと言うことはありません。
濡れた後は乾いたタオルで水分を取ってあげれば早く乾きます。
気を付けなければならないのは、かなり濡れた状態で2-3日激しく乗り続けると表面が荒れてきたことが実例として1度だけありました。私もアルカンターラを使用していますが一般的なツーリングで問題が出たことはございません。

KTM 1190RC8 Y-03とエクセーヌの組み合わせ。 シート形状も変更してあります。

KTM 1190RC8 B-19とエクセーヌの組み合わせ。こちらもシート形状変更ですね。

BMW R100GS アルカンターラ青とB-17の組合わせ。

KTM950アドベンチャー アルカンターラ黒とB-16のくみあわせ。

YAMAHA WR250F アルカンターラ黒とアルカンターラ青の組み合わせ。

ハーレーダビッドソン スポーツスター XL1200S アルカンターラ黒に赤ステッチでダイヤキルト。
そのソフトな座り心地とビニールレザーに比べて数倍ムレにくく、引き裂き強度も高く耐候性もあります。
本革やバックスキンに比べて耐久性はトータルで数倍上と言えます。
ビニールレザーとは違った高級感もあります。
サンプルが見たいと言う方は当社で実際張り込んだシートを見ていただくか、サンプル希望とご連絡いただければ小片サンプル(無償)もしくは総合カタログ(有償)を送らせていただきます。

バイクシート 張替えのデザイン




先ずは写真から。キャンディーカラーのブルーなヒョウ柄
それに合うシートが欲しいということで、ヒョウ柄!と言うわけにもいかず無難に黒のPVCレザーに太い糸でダイヤステッチとブルーのパイピング。
ベースはラペラのシートだけど、ノーマル形状がしっくりこないと言うことだったので気になる部分を補修してウレタン変更とT-NET挿入。
こうした外装の場合シートはあまり主張しないほうがいい。と言うのが私の意見です。
張替えの場合、気になるのがデザイン。
お任せの場合は当社の今までの経験とお客様の要望を合わせてデザイン案を2-3提出して選んでいただきますが、お客さまの方で既にデザインが決まっている場合は漫画を描いていただいたり、シートに直接書き込んでもらったりしてます。


切り返しが多くステッチの位置などを細かく記載していただいた例。

ここで色分けをしてほしいと、マスキングテープでマーキングしていただいた例。
このように直接シートにラインなどを入れていただくと、より理想に近いシートとなります。
オーダーの参考になれば幸いです。