New CRF450RALLY ダカールラリー


新型の写真がやっと出てきました。
実はシートは作っていたのですが、こうしてまともに装着した写真を見るのは初めてなんです。
シート屋としてはきちんと装着されていれば安心なのですが、その確認ができないまま作る続けるのは中々不安が多いです。
ライダーやメカニックが見落としている部分や、別に気にならない部分に職人は気づきたいという欲もあります。大きなお世話かもしれないけど、その気持ちが作りたい欲につながっていきます。
より良いものにしたいと思うと自然と細かなところに目が行きます。
付いてりゃいいよというシートなら、うちの出番はないですね。
今後もっと詳細な写真が出てくるだろうけど、とりあえず今度のダカール用シートの製作はすべて完了済み。
なので、メディアが出してくる写真や評価で色々考えようかなと思うところです。

並べると新旧の違いが少し分かるかな。
車体の減量もずいぶんしたと聞いている。
とにかく新型の優勝を願うばかりです。
ギリギリまでいろんなタイプのシートを作りました。
結局このウイングシートも作ることに。
勝つために必要となれば、できる限り対応するのが役目ですからね。

そんなライダーたちを支えるメカニックからも要望が来ます。
これは工具箱の蓋の裏に取り付ける工具ポケット。
ペンやタイラップ、小さな工具など結構便利なんです。
(関係ないけど、モンスターエナジーは工房にも置いてあるんですね。)
数年前にも一度作ったんですが、それを覚えていたメカが「新しい工具箱の合うようにまた欲しい」「あれは凄く便利なんだ」と言われて

蓋を閉めて移動中の振動でポケットの中身が出ないように、平ゴムも装着してあるからこぼれない。
自分で思いついて天才じゃん!なんて思いながら作った覚えがあります。
結局仕事というか、何かを作る時ってそういった感動がないと続きませんね。
お金払うからとか、図面通りでいいからとか、とりあえずなんでもいいから・・・

やはり感動の共有がないと良い関係は生まれないのです。
その場の反応が無くても、暫くしてこうして「やっぱり野口の物が欲しい」といってもらえるモノづくりをしたいなといつも思っています。

話はそれましたが、2024ダカール・ラリー。
HRCライダーとそれを支えるチームの活躍をお祈りします。

 

 

2024ダカールラリーのシート HRC CRF450RALLY

2012に「ラリー用のシートの手伝いをしてもらえませんか?」とHRCから声をかけていただき、それから12年も経ってしまいました。
12年というとなかなかの年数だなと自分でも思います。
今年も2024のダカールに向けたシート製作をしています。
2024はボディのデザインが変わるという事で、ずっと赤色だったシートカバーが青色になりました。

先のモロッコで青いシートを付けた新型が走ったのですが、詳細はまだ知りません。なんというかチラ見しかしていないのです。
まぁ、設計から言わせればシートだけ作ってもらえばいいのかもしれないのですが、結局本番になっても新型の詳細が分からないままというのは寂しいなと思います。いろいろと事情があると思うので、うちはうちの仕事をしっかりするだけと言い聞かせていますが、その仕事の情熱はどこから来るのかを考えると複雑ではあります。
まぁ愚痴るわけではないのですが、大きな組織と仕事すると色んなことがありますね。でも良いこともたくさんあります。
なんといっても、世界のHRCとロゴを並べるシート屋は他にはないかなと思っています。当初サイドにノグチマークが付いていたのですが、これも事情によって横はダメと言われて、考えた末に思いついたこのウエルダータグ。
ダメと言われてはいそうですかと引き下がるだけではやる気が起きないので、こうして知恵を絞って新しい技術を投入することで、普段のシート作りの役に立っています。
HONDAのロゴも同じ。
超グリップが良いシートカバーは表面の凸凹が深く、プリントが上手く行かないんです。
上手く行かない時もやらなくてはいけない。上手く行ってないことが分かっているので、なにか新しいものはないかと毎日探す。
探しているとそのうち見つかるもので、今では凸凹の深い生地にもしっかりプリントができるようになりました。
これも高いレベルで求められるからこそ見つけられたのだと思っています。
このトップライダーたちが求めるスペックにどうやって近づけるか。
衝撃吸収材T-NETもそうだし、オリジナルウレタンもそう。
それらの組み合わせがライダーの疲労を軽減させ、操安性能も上げることになれば、それが私たちの求める理想にシートになり、広く一般の方々にもフィードバックできるようになります。

さて、2024のダカールはどんなドラマがあるのか楽しみです。

 

 

2023 HRC感謝の会

毎年この時期に声をかけていただき、出席している「HRC感謝の会」
HRCの契約ライダーやドライバーが一堂に会します。
今回の会場はホテルニューオータニでした。
ずらりと並ぶマシンたち。
さらには
2017 日本人初のインディ500を制した佐藤琢磨選手のマシンまで!!
そして
なんと本人と記念撮影まで。

ダカールマシンの展示もあったけど、新型の展示ではなかったな。
新型のシートは作ってるのだけど、新型マシンがまだ見れていないというのは、少し気分が乗らないというか・・・。まぁいろいろ事情があるんでしょうね。
今度のダカールではぜひ優勝をしてもらいたいです。
毎年だけど、こうしてグローバルな超大企業に混じって当社のロゴがあるというのは正直誇らしいです。
パーティーではいろんなライダーやドライバーがそこかしこで談笑しているので、隙を見て記念撮影をお願いしました。
今年でホンダを去ってしまうマルク・マルケス。まぁスーパースターですね。

F1パイロットの角田祐毅選手

ジェット・ローレンス

ティム・ガイザー

今年もフジガスこと藤波さんにも会えました。

抽選会ではジョアンミル選手のサイン入りTシャツを貰うことができました。

他にも中上選手や色々たくさんの選手がいて楽しい時間を過ごすことができました。

 

 

友人が2024ダカールに出場します。

先日、友人の壮行会に行ってきました。
池町佳生
彼と出会ったのは1993の四国のラリー。
当時、私も鼻息が荒かったので、そう簡単には負けないつもりでいたのですが、競技区間で彼に恐ろしいスピードで抜かれて一気にテンションが下がった記憶が昨日のようです。
以来30年の付き合いが続いていて、いまだに挑戦し続ける彼には憧れすらあります。
壮行会には彼の人柄から、遠方から多くの人が集まりました。
ゲストもなかなか豪華で、見てて楽しかったです。

彼のマシンも仕上がって、今はサウジアラビアに向けて移動中だそうです。

シートも作らせてもらいました。

HRCの活躍も期待なのですが、友人の活躍に大きな期待をしています。

 

 

バリ島-ロンボク島ラリー2023 Bali-Rally2023

バリ島とその隣のロンボク島で行われるラリーに参加してきました。
主催はこの男Kadex. Explorideと言う会社が運営するアドベンチャーラリーです。
ちなみに参加資格があり、詳しい内容は省くけど、まぁ参加条件に当てはまればOKってわけで、とりあえず現地集合、現地解散的な大人のお遊びです。
簡単に言えば、日本国内でもここ数年でイベントも増えてきたコマ図を使って遊ぶ「バリ島版」です。
CAPまで記載されたカラーのコマ図。
距離はかなり正確で補正は少しで済むレベル。
しかし、そうは簡単ではないです。
こうしたジャングルの中を網の目のように走る細い生活道路(と言う名のシングルトラック)を数メートル刻みで、右や左に分岐を曲がれと指示が出てきます。
火山のふもとも走るのですが、パンクの恐怖と、もっと出したいスピードと葛藤をしながら、火山灰のザクザクした道を進みます。ここも写真のような道ばかりではなく、轍の薄いトラックにも入り迷います。

主催者曰く今回のテーマは「ラビリンス!」
とにかくジャングルや、いろんなところで迷路のように入り組んだ道を、迷わずにゴールを目指せだそうです。

僕のマシンはこれ。
満タンで100kmは走るのでガスの心配はないです。
ちなみにガソリンが少し足りないなと思ったら、どこの村でも売っているこの緑の瓶がガソリンなので、これを買います。
とにかく暑いです。イメージ湿度250%です。
砂漠のように水がなくなると怖いくらい汗が吹き出します。
砂漠じゃないのに山の中でスタックもします。
1度雨が降ったのですが、これがすごいスコールで、今まで埃を立てていた道が一気に川になり、雨や雷で大きな木倒れて道をふさぎ、踏み固められた土はツルンツルンに滑るありさまで、なかなかなサバイバルな日もありました。
食事はレストランで取ったり、ランチパックを持って走ったりです。
こうしたお弁当が朝配られて、各自適当に食べます。
このシンプルなお弁当。しっかり味付けもしてあり美味しいです。

こんな感じにランチタイム。
熱帯の中をこんなもの持ち歩いて食中毒は大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、参加者全員最後までお腹壊すものは一人もいませんでした。
ある意味それも参加条件です。
リエゾンの最中では、時間に余裕があれば村の売店でこうして肉団子入りラーメンとかカップラーメンを食べたりもします。

汗をかくので塩味の効いた食べ物がすごく美味しく感じます。
しかし、超スパイシーなインスタント麺もあるので、そこは要注意です。
スパイシー? ノットスパイシー?と聞いても笑顔でうんうん頷く売店の女の子。最後は勘で注文です。
食べたらまたジャングルへ・・
そうそう、今回友人の池町のマシンがKOVE450RALLYでした。
まぁ、このマシンであのジャングルを難なく走れるのは彼くらいでしょう。
と書くと「いやいや、他にもいるでしょう」と言われそうですが、ラリーでのルートファインディングにおいては、間違いなく彼は国内どころか海外でもトップクラスの能力を持っていますので、そういったことを踏まえて彼くらいででしょうという話だという事をご理解ください。
ちなみに彼は2024ダカールラリーにバイクで参戦します。

2000年のパリダカで総合10位になった彼が52歳でどんな走りをするのかとても楽しみです。ノグチシートも応援しています。
そしてKOVE450に少し乗ってみたのですが、これが意外に違和感がない。バランスは良いし、アクセルのツキもいい。思った以上にマイルドでした。もちろん海岸などで開ければちゃんと飛んでいく。KTM450ラリーレプリカは乗ったことが無いので比較してみたいです。

バリ島を走った後はロンボク島へ。
海がきれい。思ってる以上にゴミが浮いていない。
田舎道を走っていると残念な光景にもあたるけど、こうした場所はとてもきれいな印象を受けました。

この写真を撮る少し前に、参加者のインドネシア人が崖から落ちてて助けた。
「狭すぎて一瞬で落ちちゃうから怖くて」って言ってました。
とにかく慎重にっていうくらいしかかける言葉が無かったです。
ラリーで使う道は殆どがシングルトラックなのでバイクしか走れないです。
なので、対向車にこうした「作業車」が頻繁に来るので、邪魔にならないようにこちらが遠慮するルールになってます。
一番驚いたのは、20cmx20cmx3mくらいのデカくて重そうな角材をバイクの両側に縛り付けて走っているのを見ました。それもなかなかやばい山岳地帯の道で。しかも3台連なってましたので、レールか何かあるのかと思ったくらいでした。
こういう景色の良いところもたくさんあります。
しかし、走るのが精一杯でなかなか写真を撮ってられません。でも、こうしてこのイベント専属カメラマンが撮ってくれるのでありがたいです。毎日夜には配信されます。


こんなトラブルもありました。
ドレンボルトが落ちました・・
たまたますぐ後ろに友人がいたので、これを知らせてくれてエンジン壊さなくて済みました。
スタッフが「よし、前の村でドレンボルト探してくるわ」と買いに行ってくれました。
ちなみに朝のオイル交換の様子はこれです。
これとドレンボルトの関係は無いのですが、たぶんワハハワハハと楽しくやってるうちに閉め忘れてしまったんだろうなぁ。
さすがにドレンボルトのゆるみまで朝チェックするわけにもいかないけれど、それを怒るつもりもないし、なによりスタッフの人たちの終始優しいこと。
笑っちゃうくらい全員がナイスガイなんです。


あまりの暑さに川でクールダウン中。
艤装はこんな感じ。GPS マップホルダー 距離計。
昔は適当なトリップメーターで、区間距離を足し算で暗算しながらやってたけど、今回は年のせいもあり暗算が追い付かないのと、暗算している間に次の分岐を過ぎてしまう細かさだったので、ラリー中にiPhoneのアプリでラリートリップを購入してiPhoneを装着しました。

今回バリ島やロンボク島のジャングルはお腹いっぱいになりました。
普通の旅行ではいけない奥地の生活が見れたのも良かったし、良い所、これからな所など、日本では想像もしなかった人たちの生活が見れたのも良かったです。

あー-- 楽しかった5日間でした!

そうそう、最後に一言言っておかなくちゃ。
久しぶりにノーマルシートでラリーを走ったんだけど・・・
やっぱりそうでした。安心したというか、次はちゃんとシートを作って行こう。