タイムライフチェア Time-Life Chair1960

ある仕事の依頼でお客様の会社に出向いた時の事。
地下の管理室にあった、座るには躊躇するほどボロボロになった椅子が有名なデザイナーの椅子だったので「今回の仕事とは別ですが、この椅子はどうされますか?」「最近の使い捨ての椅子とは違い、張替ればまだ十年以上は使えますよ。これはとてもいい椅子なので張り替えるに十分理由があります」と説明しましたが、
お客様は「でも、張替えるにもお金がかかるから、もうすぐ捨てるんだ」「欲しけりゃ持って帰っていいよ」という事で、そのままいただいて帰ってきた。
IMG_4138イームズって言う人の名前は聞いたことがある人も多いと思います。
建築家であり現在も世界中で愛される椅子を始め様々な商品をデザインした人です。
この椅子は、そのイームズが1960 Time-Lifeビルのロビー用にとデザインした椅子です。
なのでタイムライフチェアと名付けられました。
この椅子をくれた会社は創業時1965年からこの椅子をロビーで使っていたけど、古くなりお客さんに座ってもらうには酷い状態だけど、捨てるにはもったいないなという事で地下の部屋で半分眠った形で使用されていました。なので、これは50年経過したヴィンテージ物となります。
このタイムライフチェアは、現在も生産されていますが名前がエグゼクティブチェアとなり、脚もキャスターが付いていわゆる「重役椅子」のようになっています。
123これだと正直あまり魅力を感じません。
貰って来た椅子を見ると現在生産されているものや、20年前の物と比べても違いがいくつかあります。
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ヴィンテージのタイムライフチェアの写真を見ても、なかなか見つからない同じ物。
36貰ったものは背もたれのクッションが、それぞれ1本のボルトで固定されいるんですが、検索で出てくる物は殆ど2本。
CH_TLpDb025-506x500Time-Lifeビルのロビーの写真を見つけました。たぶんこの初期モデルと同じものだと思います。
それと、初期の物はロビーやラウンジでローテーブルを置き、そこでお茶でも飲みながらくつろぐ為の椅子だったので、現行品より幅が広く背もたれが低い仕様です。座面は低く、角度も現行品より大きく取ってるように思います。
11069301972年ボリス・スパスキーとボビーフィッシャーの世紀のチェス対決ではこの椅子が使われました。これもフレームを見ると背もたれはボルト2本止めですね。
量産化となり、組み立てしやすく合理的な改良をしながら現在に至っている歴史を見るのも、息の長い椅子の楽しみです。

しかし、驚いたのが50年経過してプラスチック部品は割れもなく、回転部分のガタはほぼゼロ。カバーとスポンジ以外は全く問題ないという点に驚かされます。
これだと修復がしやすいです。とは言え、手の込んだ作りなので簡単にはいかないです。
さて、ばらしていきます。
IMG_4153IMG_4154アルミの鋳造部品はエッジの効いたラインと、少しルーズでヌルっとした面がとても美しいです。
IMG_4155IMG_4169カバーを外してスポンジ部分を観察します。変わったスポンジの構成になっていました。なぜそうしたのかという理由を探るのも椅子屋として勉強になります。スポンジは変形してへたっているので全て新品に交換します。
カバーも本革から高級素材Kvadrat社の平織に変更して張り込む事にしました。
本革は高級で長持ちすると言われていますが、革は蒸れますし、滑ります。リラックスするための椅子であれば通気性のある布で適度なすべり止め効果があったほうが良いと私は思います。もちろん革にも良いところはたくさんありますが、革が最高級、最上級ではないという事も知っていて良いと思います。

作業途中の写真が全くなくてすみません。
完成です。

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太いパイピングがこの椅子の特徴でもあるので、そこは同じ太さにしました。
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アルミ部分はヘアライン仕上げにするか、ピカピカにするか悩んだけれど、ピカピカにしました。

IMG_4496自己満足ですが、スポンジの構成を考えながらできるだけ当時のディテールのまま仕上げたつもりです。50年経ってもこうして新品のようによみがえる椅子はとても魅力がります。
座り心地は申し分なく、これでゆっくり本が読めそうです。
欲を言うならオットマンが欲しいところですが、それはまたいずれ。

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