市販車のバイクシートのカバー材料は99%がビニールレザーです。
本革シートやウルトラスエード(アルカンターラ)などもありますが、市販車ではまだ少ないです。
ビニールレザーと一言で言ってもいろんな種類があり、家具用や内装様々です。
家具用(椅子張り)のサンプル帳です。当社が仕入れているメーカーのビニールレザーを全てあわせると1000種以上に及びます。これだけあれば、希望の色や柄を選ぶことができます。
しかし、バイク用となるとその数はぐっと少なくなります。
これは当社オリジナルのバイクシート用ビニールレザー及びウルトラスエード(アルカンターラ)のサンプル帳です。
バイクでの使用に耐えうる、当社が選んだ強いビニールレザーです。
強いというのは破れにくいという訳ではなく、屋外での使用、耐磨耗など、一般家庭の椅子では求められない性能を持っています。
家具用とバイク用は何が違うのか簡単に説明します。
先ずは家具用ビニールレザー
この図のように3層になっている場合が多いです。
上から スキン層 中間に発泡層 裏はメリヤスなどの基布
発泡層があることにより柔らかさをだしています。発泡層とは簡単に言えばスポンジ状の層です。
表面のスキン層に革の模様やカーボン柄などを付けて表情を出します。
しかし、この表面のスキン層は薄いので連続する摩擦や少しの引っ掛けで表面が破れてしまう場合が多いです。
少し意地悪な試験ですが、先の尖ったもので表面をガリってすると簡単にスキン層が破れ、発泡層の強度が無いために裏地まで直ぐに到達してしまいます。
一方、バイク用レザーと言うと
図のように2層で構成されています。発泡層はありません。
表面から裏地までビニール(PVC)です。
なので、表面を多少強くこすっても破れる事は無いです。
先ほどの家具用ビニールレザーと同じ実験をしました。家具用より強くこすっても消しゴムのカスのようなビニールが出るだけで、すぐには破れません。
オフロードで山の中を走る人は「そうは言っても枝が刺さればすぐに破れるでしょう?」と思うでしょうが、それは仕方がないです。
破れない素材はありますが、それらは伸びないなどの問題からシート素材には適していません。(実際には破れないレザーは存在するのですが、まだバイクに転用する価格とロットになっていないのが現状です)
普通に乗っているだけで表面がひび割れたり、摩擦で表面が削れたりしないようなビニールレザーをバイク用として使っているのです。
ちなみに、発泡層があるビニールレザーは全てバイク用に適さないかというと、そうではありません。当社でも場所によっては使う場合もあります。
何をカバー地に使うかは、その会社の考え方なので自由です。
今回は当社の考えを述べているだけですので、反論や間違いなどの指摘はこっそりやさしく連絡ください。
ついでなのでウルトラスエード(アルカンターラ)についても説明します。
なぜそんなに高いのだという声も聞こえますが、それなりに理由はあります。
これはMVアグスタF4のシートです。素材は「イタリア製のアルカンターラ」です。
日本製のウルトラスエード(アルカンターラ)とは少し違います。
写真で見る用と分かるように、生地が伸びて表面の毛羽立ちも多いです。
ウルトラスエード(アルカンターラ)は超極細の糸が密に絡まっている、フェルトのような構成の生地です。
なので、その糸がほぐれてしまうと毛羽立ちや伸びが出てしまいます。
この伸び止の生地がポイントなんです。
これがあることで、先のシートのような問題を発生しにくくしています。
拡大してみましょう
裏からもこの伸び止を見ることは出来ません。
縁の下の力持ちのように、見えないところで高級素材を高級なまま保っていてくれます。
ざっとこんな感じでカバー素材の説明をしましたが、これでも本当にざっくりした説明しかできておりません。
張替をされるときに悩んだら先ずはご相談ください。