ステッチの話

シートカバーの切り替え(つなぎ目)の縫製にはステッチやパイピングを入れます。
縫いっぱなしの場合も時にはありますが、基本的にはシングルステッチを入れます。
なぜステッチを入れるかというと以下の図をご覧ください。

生地同士を縫い合わせただけの縫いっぱなしの状態だと、張り込み時に縫いシロが右や左に倒れてしまい縫い合わせのラインが乱れます。
また、厚みのあるバイク用ビニールレザーだと縫い合わせた部分が膨らんでしまい、レザーが浮いてウレタンに密着しません。
ステッチを入れることで縫いシロが押さえられ、かつ縫いシロが一定方向を向くので張り込みがしやすく、仕上がりもきれいになります。
縫いっぱなしの縫製をした裏側はこのようになっています。通常、縫いシロは8-10mmあるので、その部分だけ膨らみます。
今回はあくまでもバイクシートに限っての話なので、家具や車その他の張り物とは考えが変わります。

ステッチにもいろんな種類がありますが、今回は2つ。
シングルステッチとダブルステッチ
縫いシロをすべて片側に倒してステッチをかけるのがシングルステッチ
両側に倒すのがダブルステッチです。

シングルステッチ
これが一番多いステッチです。
このステッチにもう1本ステッチを走らせる方法もあります。
糸の色を変えたりステッチを強調したい場合には、このシングルのダブルも良いかと思います。
シングルのダブルはこんな感じです。こうしたラウンドした縫製部分はシングルのダブルがきれいに仕上がります。ダブルなのでステッチも目立ちます。

ダブルステッチは縫い合わせた生地の縫いシロをそれぞれ両側に倒してステッチをかけるため、縫い合わせ部分の引っ張り強度は「糸のみ」となってしまうので図のように裏に1枚テープを当てて補強します。こうすることで引っ張り強度は保たれます。しかし、裏のテープを取り付けるため生地の伸びがなくなったり、急カーブな縫製を苦手としたりします。
シングルステッチの場合、縫いシロをどちらに倒すかで見た目も変わります。
これは側面(当社ではマチと呼んでます)にステッチをかけた場合

これは上面(当社ではカガミと呼んでます)

違いはありますが、シートの形状や色の組み合わせなどで指示がなければ当社が思う最適な方向でステッチをかけています。

ダブルステッチとシングルステッチの大きな違いがステッチ部の厚みです。
図を見ていただければわかりますが、ステッチ部の厚みはシングルは生地3枚分、ダブルは2枚。 厚さ1ミリのビニールレザーだと2mmと3mmの違いがあります。これが違和感になると心配なさる方もいますが、それほど大きく干渉するものではないので気にするレベルではないと思います。
もちろん、だからと言って強制するつもりはありませんので、気になることはすべて解消するように対応します。
ダブルの場合必ず補強テープを入れる(例外もあります)ので厚みは同じになることが多いです。
どっちが丈夫?という質問もよくされますが、縫製する部分が少ないシングルのほうが若干は強いと思いますが、ダブルも補強さえ入っていれば問題はありません。
手間が増えるダブルに関しては加工費も一般の縫製より上がります。

ステッチで迷われた場合はご相談ください。カバーデザインに最適なステッチの方法をご提案させていただきます。

今回はステッチの話でしたが、パイピングやタックロール、刺繍など縫製にまつわる話はまだありますので、機会を見て紹介していこうと思います。

 

ウエルダータグ ロゴマーク

CRF450RALLYのシートにも取り付けているウエルダータグ。
高周波溶着で生地に溶接するので頑丈です。
ダカールラリーでの過酷な状況でも問題はありません。

当社のロゴはプリントでもできるのですが、このエンボスのウエルダータグの取り付けが最近では一般的です。

そして、今回は新たに2色追加しました。
スタンダードに加えてブラックラベルとホワイトラベルです。
タグのデザインは同じです。
(タグなのかラベルなのかロゴなのか、言い方統一しろよと言われそうですが、まぁそこは目をつむってください)
黒いシートが多数を占めるので、黒のビニールレザーとウルトラスエード(アルカンターラ)に付けてみました。

ビニールレザー

ウルトラスエード(アルカンターラ)

こうして当ててみるとイメージが湧くかと思います。
自画自賛ですが、黒い生地にブラックラベルがいい感じです。

ホワイトラベルは赤が無いだけで一層目立つ感じです。

ロゴをつけたいお客様には、選ぶ楽しみもできたのでタグを増やしたのは良かったと思います。

 

シートの防水加工について

当社のシート加工は、理由がない限りウレタンに防水処理をしています。

これによって、縫製部などから水の侵入があってもウレタンに水が浸み込むことがありません。

表面の白い材料が防水のEVAの発泡シートです。発砲の硬さもバイクシートに合わせた物となっています。
EVAのみの販売もしております。

ほとんどのシートは、このEVA発泡シートで防水加工ができますが、EVAは大きな伸びがないので、複雑な形状や大きなシートなどではEVAの防水処理ができない場合があります。
そう言った時にはフィルムで防水処理をします。
フィルムというと、ポリ袋や塩ビ系のビニールシートなどを想像されるかと思いますが、それらを使うと以下のようなデメリットがあります。
* カバーがフィルムによって滑る。
* カサカサ、クシャクシャと音が出る。
* 長年使っていると破れたり、カバーの下で偏りが出て防水の効果が無くなる。
などです。

そこで、当社ではフィルムで防水をする場合は「ポリウレタンフィルム」を使用します。

カバーのよじれによって音も出ず、伸び率が500%以上あるのでシートウレタンのクッションに追従する、梨地なのでカバーが滑りにくい、なにより全てにおいて一般的なビニールやポリエチレンフィルムより優れています。

見えないところに使用する材料によっておこる問題が一番怖いです。
見えない場所だからこそ、しっかりした材料をノグチシートは使用したいと思っています。

 

快適なシートについて毎日考えてます。

お尻が痛い、とにかく痛い、乗り始めて直ぐに痛くなる、痛くて乗ってられない!
「でもバイクに乗りたい!」
という相談をノグチシートだけではなく、全国のシート屋さんは受けてられると思います。

その解決方法はシート屋さんそれぞれの考えがあり、これが一番というものは無いと私は思っています。が、一番を目指して頑張っています。

自分にとっての快適なシートは作る自信があります。ツーリングに出かけたり、ラリーに参戦したときにお尻が痛くてライディングに集中できないとか、レースどころではない、なんてのはごめんだからです。自分の好みがしっかり分かっているのと、体形と車格とシートのバランスをとることは自分のものであればほとんど間違いなく快適なものを作ることができます。お客様に提案するシートの基本はこれです。自分が良かったものを提案することは一番大事なことだと思います。

先日、お客様からこのようなメールをいただきました
”貴社から受領しましたシートで梅雨明け後2回(180kmと210km走行)程乗車しましたが、過去に貴社で張替えして頂きました2台のシートでは臀部の痛みはほとんど発生しなかったのですが、今回は以前よりシート表面が硬い感じがして張替え前の純正と比較してあまりコンフォート性に関しては大差がありませんでした。”

ご注文をいただいて加工をしましたが、良い結果が得られなかったことは残念なことではありますが、以前に加工させていただいた材料や加工方法と変わっており、また日々進化している加工方法や材料を取り入れて、私が現在一番良いと思うものをお客様にご提案しています。なので、昔の材料と加工方法はもう使うことがないので昔良かったのに今はダメという、このような結果になることも予測はできます。
「私が今一番良いと思うもの」がノグチシートの方針ですが、良いと思う基準は自ら長距離を乗り、競技に参加し、更には様々なライダーの意見をまとめた結果なので、こうした意見をいただいてしまうことは仕方がないことではありますが、ご満足いただけなかったという意見については今後のシートつくりの参考にさせていただきます。
今年優勝したHRCのダカールマシンのシートも、一般のお客様のシートも材料から作り方まで中身は同じです。ダカールシートの場合は、プロライダーがミリ単位の形状オーダーを出して来て、カバーのグリップ力、ウレタンの硬度など、それはシビアな要求をされます。初めてシートをオーダーされる方に、それらすべてを決めてもらうのは難しいと思います。
なので、ノグチシートは快適なシートの為に衝撃吸収材T-NETとオリジナルウレタンの組み合わせを提案しています。現在、これ以外には提案する快適な素材がないので、それを使用してシートの角度、幅、高さ、内股への干渉部分などの形状変更とカバー素材の選択を経て加工していきます。

快適なシートには、足つきが改善されただけでも良い場合もあるし、全てが衝撃吸収材T-NETの挿入だけではないですが、なぜそこまでノグチシートはオリジナル素材の衝撃吸収材T-NETを推すのか、これの効果について今回は説明したいと思います。
ここまで偉そうに語っておいて手描きのイラストですみません。
それと、これからの説明は私の独自解釈なので、医学的に間違ってるとか、それはノグチの感覚がおかしくないかと様々な意見があるかと思いますが、言われると凹みますので鼻で笑う程度にしてください。
さて、先ずこの絵。硬いシートに座った状態を表しています。先のブログでも書きましたが、正座して足が痛くなってしびれてくるあの状況に近いです。
体重とクッションの反発でお肉が潰れて荷重が座骨や尾骨に1点集中しています。
硬いクッションはシート上で動きが激しいレーサーなどでは有効ですが、長距離のシッティング姿勢が多いとなるとよほど硬めが好みの人ではない限りお尻にしびれや痛みが出てしまいます。
バイクに乗り始めた頃やシート改造を始めた頃、シートは硬いほうがいいという話を聞きました。この場合の硬いシートとは、跨った時に硬く感じて、長時間乗った時でも底付きしない程度の厚みと弾力を維持していると解釈しています。ここで書いた硬いシートとは、とにかく板のように硬いままのシートを指します。

これは乗った瞬間に柔らかいと感じるウレタンや低反発ウレタンに座った状態です。乗った瞬間はお尻を包む感じがして、その感触からなにか楽そうに感じて、そのまま一日痛みもなく走り続けられればOKなのですが、私の場合はこれらのウレタンを使用した場合、特に今の季節ウレタンが熱を持ちやすいと、沈み込みが乗り始めから比べるとかなり深くなり、深くなった部分の反発だけ強いものになって硬いウレタンと同じように骨の部分の肉が圧迫されたり、場合によっては底付きして圧迫されてお尻が痛くなります。更に沈むことで周りの肉も圧迫されて痺れてきます。それと、柔らかいシートは運転中もフワフワして落ち着きがないです。

衝撃吸収材T-NETとオリジナルウレタンの組み合わせの場合、座った瞬間は硬く感じます。しかし、ライディング中のシート温度の上昇によって表面のウレタンは柔らかくなって沈みますが、その下に衝撃吸収材T-NETがあるため沈んだ圧力を分散し、10mmの厚みのT-NETですがウレタンのように潰れ切ってしまうことがありません。
また、T-NETはウレタンでサンドする方法を取っていますが、T-NETの底になる部分のウレタンは乗車して沈み込んできたT-NETに対して反発をしますが、その反発もT-NETが分散してくれます。
なので、絵に描いたようにお尻の肉が潰れない。わけではなく、多分潰れてはいるけれど潰れていない、そんな感覚に私はなります。低反発ウレタンのような包み込む感触はないけれど、お尻全面で支えてる感じです。
座った感触はウレタンが反発するばねのような感触はなく、硬い綿の座布団に座った感触。分厚いフェルトの上に座った感じ。沈まないけど体圧が分散されてる感じです。硬いけど支えられているというのが重要だと思っています。
沈まないというのは結構重要で、特にアンコ盛りをした場合などは盛った分だけの効果は必ず欲しいのです。見た目の高さではなく乗った時の高さ。
これはダカールライダーからも同じ要望があり、10mm上げて欲しいと言われれば寸法上ウレタンを10mm上げるだけではなく、10mmの体感が必要なのです。
これを硬いだけのウレタンで作れば簡単なんですが、それでは硬くて乗ってられないシートになってしまう。結果として衝撃吸収材T-NETとの複合が今のところのベストとなるわけです。これがダカールスペックと呼んでいるウレタン構成です。

色々と述べましたが、まだまだシートには不満があります。不満が無いと進歩もありません。全ての皆様に快適なシートをと言いたいところですが、まだまだそこに至るにはどれだけかかるか分からないです。自己満足の押し付けではなく、きちんとしたデータと実績に基づいたシートのご提案が基本だと思っています。それが私が一番好きなシートとなるわけです。
「快適なシート」はシート屋にとって永遠のテーマなので、作って自分で乗っての繰り返しです。
来月にはいよいよハンターカブが納車されるので、既に製作してあるシートを試すのが楽しみです。
大型バイクとは違った何かが、自分で乗ることで色々見えてくるかと思います。とにかくいつでも新しい発見に飢えているのできりがありません。

シート改造をしたいなと考えているなら遠慮なく問い合わせください。
現状のシートの不満に対する改造プランを、お客様にご理解いただける言葉で提案させていただきます。