巨大魚を釣る

先ず、どうでもいい話です。と断っておきます。
この話は、毎年夏になると必ず思い出すことで、30年も前の事です。いまだにその場所を通ると、鮮明にその時の情景が思い出されます。

①の絵。車が頻繁に通る車道脇に、川の増水時対策のコンクリートの壁がありました。
下の川は、当時深さもあり鯉がたくさん泳いでいました。それを狙って「吸い込み」と呼ばれる仕掛けに練り餌をつけて投げ込み、竿をコンクリートの壁に立てかけ、竿の先にはわずかな魚の当たりも逃さないように鈴をつけて待ちます。
もちろん一人ではなく、友人と数人でいろんな話をしながら、巨鯉が掛かるのを待ちます。

待ちます。

待ちます。

・・

リンリンリーーーン!少し離れたところで、魚の様子を伺っていた時に、けたたましく鈴がなりました。
あわてて駆け寄ると竿は何事もなかったように静まっており、糸は力なくタラーンと垂れていました。「バレたか(釣り用語で外れるの意味)」と駆け寄った友人と話していると、コンクリート壁の向こうから笑い声が!
別の友人が、壁の向こうに隠れて糸を引っ張っていたんです。

おっ!

!!!

その時、いい事をひらめいてしまったんです。
②の絵です。

「おい、そのままそこにおって糸持てよ」
「そんで、すげー勢いで引っ張れ」
「俺も竿グイグイやるでな」
「合図したらすぐに糸を離せ」
塀の向こうに、タモを置いてパフォーマンス開始。

1台の車が来ました。
「今や糸引け」
弓なりになる竿。しかも、それは車の中から見ても巨大魚が掛かったとしか思えない光景。

キィィーーッと止まる車

「糸離せ!」
うなだれる糸と直立する竿・・・・

車からものすごい勢いで出てくるおじさん。竿を見るなり「おいっ・・あっーーあぁぁぁ」「バレたんか?」

「うん」

塀の向こうを覗き込むおじさん。塀の向こうには【巨大魚係】の友人が、糸をタモに持ち変えて悔しそうな表情をしている。
僕たちも口々に、でかかったよなぁ今のは。
と、笑いをこらえるのに必死・・。

この遊びで、面白いほど釣れました。入れ食いです。大小の車が。
そんなにみんな釣り好きなのかと思うほど、急停止をして「おい、大丈夫か!」って。

ひどい遊びでした。今、逆の立場でこんな光景を見たら、同じように止まって見るでしょうね。

その時それが いわゆる 【釣り】 と分かっても、怒らず去っていこうと思います。

少年時代の話でした。