先ず、シートにカバーを張り込む前に当社では必ずしていること。
防水加工
これはウレタンの加工をして形状が整った状態。
ここまま表皮を張り込むと水が浸入した場合ウレタンがどんどん水を吸ってしまいます。
防水コーティングをしたところです。
独立気泡の発泡シートを接着剤で全面に張り込みます。
これで水はほとんど浸入しません。
しかし、ウレタンは空気の出入りがありますのでシートベースの空気抜きの穴はちゃんと確保します。そうしないと風船が割れるようにシートが破裂しちゃいますからね。裏側に穴があると水が入りそうですが、今までの経験で水没やよほど条件が悪くない限り水は入ってきませんでした。
ちなみに、この防水シートは厚さ約1mm。なので、張り込む前のウレタン成型でデコボコが残っているとそのまま表皮に出てしまいます。
柔らかいウレタンでデコボコ隠しすると楽なのですが、なんとなくあのふわっとした感触が好きではないので当社ではショーモデルなど以外には使用してません。
さて、表皮ですがカバーを作るにあたっていろいろと方法があります。
1枚で張る方法は置いといて、だいたい2枚や3枚などの繋ぎ合わせの立体縫製によって仕立てます。
縫い合わせのところで色々と化粧と言うのがいいのか分かりませんがステッチやパイピングなどでデコレーションします。
これは縫いしろを片方に倒して押さえるシングルステッチ。
こちらがダブルステッチ。
こうして断面図にすると両方の違いがわかりやすいですね。
シングルは片方に縫いしろが来るのでその部分のレザーの厚みが3枚になるので、場所によってはふくらみが出る可能性があります。一般的には同色の糸でステッチをかけますが、色違いでアクセントを付けることもできます。
強度的にどちらが強いかという質問を受けますが、ダブルも裏に補強の当て布を入れますので大きく強度の差は出ません。
これはパイピングです。糸で色違いのラインを入れるよりはっきりしますね。
パイピングも同色の場合が多いですね。
座面とサイド部分を色違いで張る場合などは、サイドの色と同色でパイピングを作ることが多いです。
同色でも色違いでもお客様の欲しい色使いに対応します。
これは座面にタックロールが入っていますね。
コレが入ると一気に重厚感が出ます。写真のように中央に配置して枠取りする方法もあれば、全体をタックロールにしたりと加工の幅は色々あります。ただし、タックロールをする場合は防水が完全できなデメリットもあります。
オフロードでは一般的ですがロゴのペイントもできます。(ロゴについてここに詳しくあります)
ビニールレザー用の特殊な塗料でペイントしますのでべとついたり、すぐにはげたりしません。
白 黒 シルバー ガンメタなどがあります。特に黒レザーで張り込んでガンメタでペイントをすると光の当たる角度で見えたり見えなかったりするので、ロードバイクやあまり目立つペイントはしたくないけど、ロゴが欲しいという方にはお勧めしています。
ロゴペイントのの後ろについているのがアルカンターラのタブ(タグ?)
アルカンターラを使用するときは、このアルカンターラ純正ブランドタグを取り付けることができます。
野口シートのタグですね。
とりあえず表皮についてはこんなとろでしょうか。
また思いついたら書きますね。
バイクシート 張り替え 生地について
バイクシートの張替えと言っても加工業者によっていろいろやり方がありますね。
うちが一番と言いたいところですけど、決めるのはお客さんですからうちがいいと思ってやってる加工内容と素材の紹介です。一度に書いても長くなるので今回は表皮材から
ビニールレザー
左は一般的な家具用レザーの断面図。 右はバイク用。
左は上からスキン層、中間に発泡層、裏面には基布と言われるメリヤス生地の3層になっています。スキン層は極薄なので椅子やソファなどにはソフトで良いのですが、バイク用となると少しの引っかきで裂けてきてしまいます。
一方バイク用は表面から基布まで全てビニールなので多少の引っかきでも避けにくくなっています。
もちろん当社で使用するビニールレザーは99%右のバイク用のほうですが、発泡層があるビニールレザーでも使用箇所によっては問題ない場合もあるので使用する場合もあります。
ビニールのメリットは、防水性がある。耐候性に優れている。加工しやすく安価である。
天然皮革
使用することはあまりないですが製作は可能です。
天然皮革の風合いはビニールレザーにはない質感がいいのですが、雨や経年劣化で見た目に良い感じではないヤレ感が出る場合が多いですね。まぁそれは車種にもよりますけどね。
バックスキンなどは色の飛びが早いので人工スエードをお勧めしたりしています。
座面を黒のバックスキンで張って3年ほど経過して色が抜けてしまった例。色が抜けたと言うだけで使えないわけではないです。
ヌメ革やサドルレザーで作るとまた話は変わり、飴色になるその変化は十分楽しめますね。
人口スエード
エクセーヌやアルカンターラですね。
ものすごく簡単に素材の内容を説明するなら、極細の繊維がかみ合ったフェルトのようなものでしょうか。
そのタッチは柔らかくしっとりしていて天然皮革よりもいろんな面で扱いやすい。
イタリアのアルカンターラ社製造の物と国産のアルカンターラではやはり違いがありますね。
これはMVアグスタのシート。座面のアルカンターラが伸びきってしまっています。
ビニールレザーと違って伸び止めの基布が中間層に入っているのですが、イタリア製のアルカンターラはそれが弱いのかもしれません。国産のアルカンターラはここまでダラダラに伸びきることはないですね。
このシートはダカールラリーともう一つ砂漠のラリーで使用したシートです。座面はエクセーヌで張ってあります。
サイドのビニールレザー部分は破れていますが、座面はほとんど荒れていません。座面に乗せてある小片はバージンのエクセーヌです。あまり色などに違いはありません。
エクセーヌとアルカンターラの違いについてはここでは省略。まぁほぼ同じですけどね。そのブランドで使用範囲が大きく違っています。国産でアルカンターラのソファってないでしょ?もっと知りたければinfo@a-seat.jpへメールください。
・・・話を戻します。
人口のスエードを使用するメリットとして、タッチが柔らかい。夏場など座面の温度上昇が少ない。長時間座っていても蒸れにくい。ビニールレザーに比べて破れにくい。適度な滑り止め効果がある。などですね。
特に夏場など長時間炎天下で駐車していてシートが熱くなってしまうことがありますが、アルカンターラやエクセーヌだとそれがありません。しかし、この表皮には防水性がないので雨もガンガン走る場合は少し気になるところです。
ちなみに表皮に水はしみますが、当社のシート加工にはすべて防水加工を施しますので雨に当たってもスポンジにしみ込んでいつまでも不快な思いをする事はありません。
こちらでカラーバリエーションを確認いただけます。
総合カタログもございます。
今度は表皮の縫製についてお話します。
バイクシート
たまにはシートの話題も
最近張り替えたシートでこんなのがありました。
クラウザードマーニ
現車は一度しか見たことがありません。ここの記述によれば生産台数300台の大半が日本に流れてきたと言うが・・。
13パーツからなるシートやパッドは全て手作りのFRPベース。CRスポンジと言うネオプレンのようなクッション材が入っていました。体が当たる部分にはT-NETを入れて張替。一見左右対称に見える部品も微妙にいびつなので型取りが大変。通常だと型取りは半分型を合わせてあとは左右対称にすればいいのだけど、対象じゃない場合は全面取らなければならない。当たり前での話ですけどね。
ご依頼を受けたショップのページです。
ジェットの張替もたまに依頼されます。
この場合は社外品のカバー持ち込みで張替でした。
とにかく大きいシートですね。
シートを張替る場合どうしても色で悩まれる方が多いです。結論から言うと黒のツートンが一番無難で飽きが来ないのでお任せの場合はそれを提案しますが、それでは面白くないからということでお客様から色のオーダーをいただいて切り返しのデザインから依頼通りの張替えをすることも多いです。
これはMVアグスタですね。エクセーヌでの張替えです。
BMW R1150ADV
DUCATI ムルチストラーダ
バイク用レザーとエクセーヌ、アルカンターラなど各色取り揃えています。
カタログもありますよ。
張替えた写真などは今後も色々掲載していきたいと思います。
こちらでも掲載中です。
バイクシートはほぼなんでも改造、張替えが可能です。
形が気に入らないという場合はなおさらです。
タンデムしていてパッセンジャーが前にずれにくくしたい。
ライダー部の着座位置が前なので腰の当たる部分を少し前に出して当たりをよくしたい。
運転しているときに体が前にずれてしまうからシートの角度を変えたい。
長距離で快適なシートにしたい・・・・・・
そんな依頼に対して大幅な形状変更をしても型崩れしにくく快適なシートをお届けします。
ダカール用シートのこと
ダカールに出場する車両へシートの供給と言っても、使用しているのはスパルコやレカロがついてるやん。と、しっかり見ておられる方もいると思います。そうです、シートのフレーム。いわゆるシェルはFIA公認の物を使用しています。うちが協力するのはクッション部分ですね。バイクシートは作ってしまうと現場で手直しができないけれど、車のシートの場合現場でクッションの厚み変更や、体へのフィッティング調整など様々なことができます。
なので、現場でドライバーやナビの話を聞きながら実際に座ってもらって、クッションの角度、厚み、硬さ、素材などなどなどなどを調整して1日1000km走っても疲れないシート!・・?に、なるんです。いや、絶対なるね!
1つのシートにこれだけの種類のクッションと調整パットを用意して、さらに現場で微調整します。
現場には生のウレタンも持ち込みその場でクッション製作もします。この写真はフランスのトヨタ車体のガレージにて。
とりあえず座る人の好みを記憶するために完成したら自分でも座ってみます。
一通りセッティングが済んだら、あまったクッションで簡易サポートクッションを作りレンタカーに取り付けてダカールを追いかけたりもしました。追いかけると言っても3000kmくらい走りますからね。このクッションもかなり有効なんです。
ルマンにあるJRMのガレージにもいきました。
日野レンジャーの車内の様子
おまけの写真
これはフォーミュラーカーの座席が大きすぎてポジション眼底しないと言う事で依頼を受け、取り外しができて調整もできるクッションを取り付けたシートです。
さらに詳しい内容が知りたい方は気軽にお問い合わせください。
こちらも
クラブハーレー掲載シート製作
先ずは、かっこ悪いですけど言い訳を一つ。
掲載のシートですが、わかる方はわかると思いますが車体とシートが合ってません・・。
作ってしまってから気づきました。
年式と形状が同じなので佐藤さんの883に装着できると思っていたのですが、シートベースの形状が微妙に違っていてシート下のコンピューターに当たってしまい浮いてしまっています。
2004以降のシートベースは全部同じかと思ってました。
シート自体はノーマルのままです。
一つ勉強になりました。
・・・トホホ フェンダーと隙間なくピターっと装着できていれば・・なんでもそうですがタラレバは無しですね・・。
さて言い訳はこのへんにしておいて、せっかくなんで誌面に紹介できなかったシートの中身を、お見せします。
無茶な佐藤さんの要望は「小物が入るノーマル形状のソロシート」なので形状は変えません。
小物入れと言っても、オフロードのようにバッグみたいにしたんではかっこ悪い。
なので、乗車しない後部全てをハードケースにすることにした。
ハードケースの製作は当社で販売している「光硬化型FRP」を使用。
カッティングシートのように切って貼るだけ。
後は外で紫外線に当てれば5分で硬化。
面倒なエポキシの混合や塗布は必要ありません。
大掛かりな補修や製作にはコスト的に不向きですが、こうした工作や小さなものを補修する時は簡単で早いのでとても便利です。
先ずは、シートそのものを型にします。
離型しやすいようにビニールレザーを張り込みます。
そこに光硬化型FRPをペタペタと貼り込んで、外で陽に当てて・・5分で硬化。
ウレタンと切り離してケースを補強。
補強したケースを再びシートベースに組みつけ。
フタはクイックファスナーで取り外し式とした。
紛失の心配もあってヒンジも考えたけど、蓋が微妙な湾曲形状なのでヒンジがスムーズに動かないことが判明したのでこの方式に落ち着いた。
FRP表面の凸凹を隠すためにウレタンを貼り付け整形。
防水シートを全体に貼りつけてシート本体が完成というわけです。
フタにも防水処理が施してあるのである程度の水(小雨??)なら中の小物が濡れることはないと思う。
ノーマル表皮を再び貼り込むこともできたけど、さすがにそれではカスタムした感じが薄いので、表皮のデザインはノーマルだけど座面にはアルカンターラを使用して、ステッチは白とした。
それでは、完成したシートは誌面で見てください。