バイクシート改造 アンコ抜き

他に変わる言葉もないわけでもないがずいぶん前からシートのウレタンスポンジを削って低くすることをこう呼んでますね。
なんかいい言葉ないかなと常々考えてます。
足つき性を良くしてタチゴケなどの不安を解消したい。と言う依頼は多いです。
シートが薄くなれば足つきがよくなる。
確かにそうなんですが、この絵をご覧ください。

シート断面の形状が台形の物が多いので、単純に薄くすると幅は広がってしまい内腿への干渉が強くなって薄くなったのに足が出しにくくなってしまうことがあります。これが悪いわけではないのですが、低くする場合は基本的にシート幅もノーマルを維持するようにしております。
薄くするとこんな問題も出ます。

実際はこんな沈み方をしませんが、クッションに厚みがあればお尻をクッションが支えてくれますが、薄くなるとシートベースの硬さがお尻に伝わります。底付きですね。路面からの振動や衝撃、自身の体重などでお尻への負担は増すばかりです。
これについては当社オリジナルの加工。T-NETの挿入でかなり改善されますが説明はまた別の機会に。

絵はオフロードタイプですが、基本的にはロードバイクも同じような加工となります。
■ アンコ抜きについて
1 シートの高さは変えず足つきを良くしたい場合。
【メリット】
シート前部を細くシェイプすることによって足が出しやすくなり、シート幅が細いために車体に違い場所へ足を下ろすことができるため、ノーマルより若干足つきに安心感が出る。
ノーマル表皮を流用することができるため、比較的安価に改造費が抑えられる。
【デメリット】
大きな変化を望むことができない。
乗車位置が前よりなポジションを好む方は、この方法だと居住性が悪くなってしまう。
2 シートエンドはそのままに前に向かって角度を変える方法。
【メリット】
絵を見て分かるようにシートを薄くできるため足つき性は向上します。
20mm程度までのアンコ抜きであればノーマル表皮の流用が可能。
【デメリット】
大きく下げる場合は張替が必要になる。
ウレタンが薄くなってくると必然的にクッション性が落ちる。
前下がりのシート角度となるため、走行中自然に一番低い場所へ尻がずれてしまう傾向にある。
3 シート中央より後ろ部分を下げて段付にして下げる方法。
【メリット】
着座部を下げて、さらに前部も下げることで着座したままの位置で足つきが向上する。
後ろを下げることでシートの角度が地面と平行に近くなりポジションが安定する。
【デメリット】
張替が必要になる。
シート形状が段付になることにより体の前後移動の範囲が狭くなる。
このように一言でアンコ抜きと言っても色々方法があります。
足つき(アンコ抜き)と快適性と言うのは相反するところではありますが、それを両立させるためにお客様と蓄積された技術によって要望に限りなく近いシートにしたいと思います。

イベント

岩崎モータスの岩崎さんからお誘いを受けてバイクのイベントに出かけた。
場所は猿投アドベンチャーフィールド
ここは4輪駆動車の体験走行会をするところ。
普段はバイクで走れません。
今後ここでどんなことができるかなと言う実験的な意味もあって、今回のイベント開催となった。
レース形式ではなく、自分のバイクを持ち込んで自分の好きなように走る一日でした。
4WDのクロカンコースもあるのでトライアル的なセクションもあり楽しそうでした。

久しぶりな友人たちとたくさん話ができたし、お昼はみんなでバーベキュー

ノンアルコールビールで楽しく食事ができました。
のんびりほのぼのとしたバイクイベントもいいもんです。

バイクシート ウレタンのこと

良く聞かれること。
シートのウレタン(スポンジ、クッション材)は
硬いほうがいい?
柔らかいほうがいい?
結論としては、どっちでもいいんです。
となると話が終わっちゃうけど、お尻の大きさやシートの幅や角度、乗る時間、ソロなのかタンデムなのか・・・いろんなシチュエーションがある乗り方にコレです!というクッションは無いと言うのは正直なところです。
でも、柔らかすぎて沈み込みが大きくてシートベースにお尻の骨が当たったり、硬すぎて着座位置が安定しなかったり、シートの上で跳ねたりするのは良くないですね。
なので、先ずは乗る人の好み優先で柔らかさを決め、その柔らかさとシートの形状やシートベースの形状で硬めや柔らかめに変更すると言う提案をさせてもらってます。
さて、硬さをどうするかの前に一般的な市販車のウレタンがどうなっているか知っていますか?
モールド品と呼ばれる成形ウレタンで出来ています。
型の中にウレタンの原液を注入して発泡させる方法です。

モールド品の断面図です。
表面はスキン層と言われる部分で、被膜のようになっています。
スキン層のすぐ下あたりは写真ではわかりずらいかもしれないですが発泡の密度が高いです。
これは型の中で発泡して型の中で充填されると外側に圧力がかかり密度が高くなるのです。
アンコ抜きをするとシートが柔らかくなってしまった経験はありませんか?
それは、表面層の硬い部分がなくなってしまったからなのです。
最近は発泡不良品を見ることは少なくなりましたが、今まで大きな穴があいていたり、スキン層下の部分が硬すぎて割れた物など数多く見てきました。
当社でアンコ抜きをする場合は、削った後にスキン層の再生に近い形で防水コーティングを施すので極端に柔らかくなったりしません。

全面に貼り付けます。
当社が得意とするのはクッション材の積層です。積層する事によって薄いシートなら底付きしないクッションとなり、分厚いシートなら型崩れしない快適なシートを目指しているところです。
なので、アンコ抜きで薄くなったシートは防水コートしても底付きの恐れがあるので底付き防止にT-NETの挿入をお勧めしております。

コレを入れることで柔らかくても底付きせず、下の写真のように積層を重ねることで厚みのあるシートでも、さまざまな感触を作り出すことできます。

ちなみにオリジナルのスポーツスターシートの中身はこんな感じです。
厚み30mmのクッション材ながら硬さをあまり感じず長距離走行を可能にしてます。

とりとめの無い話になってしまいましたが、ウレタンはシートの要なのでまた書きたいと思います。

海外からバイクシートの注文

3年ほど前から海外からの問い合わせがチラホラ来るようになりました。
いままでの実績はドイツ 香港 オーストラリア ロシアなど。
ほとんどが「ラリーでおたくのシートを見て触ってまたがって気に入ったから同じ物が欲しい!」ですね。
日本からDUCATI関連の雑誌を取り寄せている人が、当社で作ったドカティモンスターのシートを見て「私の妻にプレゼントしたいので作ってほしい」と言う注文もありました。
さて今回はロシアから。
モンゴルのラリーで知り合い、その縁でシートを作ったパベルから再度メールが来た。

彼のバイクはWR450のラリー仕様。
・・・・僕の友達が野口のシートが気に入ったので作ってくれないか?バイクはWR450Fなんだけどね。作ってくれるかな・・
お安いご用です。
英語は得意ではないけど、英語でのやり取りなら何とかなる。と言うか何とかしなきゃいけないんですけどね。
彼とはモンゴルのレースで知りあったんだけど、私はオフィシャルなので会話する機会がほとんどなかった。だから彼とは、ほんの少ししか会話してないんだ。
ちゃんとした会話なんてチェックポイントで彼が到着して開口一番
「ノグチサーーン。チェックカード入れの蓋が上手く閉まらずパタパタしているうちにチェックカードが飛んで行ってしまったじゃないか!」でした・・。
マジックテープの強度が弱かったみたいで申し訳ないないと謝ると
「いいんだ、なくしたのは俺だ。次作るときは無くならないようにしてよ」って、まぁさっぱりと気持ちのいいこと言ってくるナイスガイのイメージが残っていた。

チェックカードがなくなってチェックポイントで休憩するパベル。
その後メールのやりとりもないまま時間が過ぎて行った。
1年後
友人の山田さん(バイオディーゼルアドベンチャー)がバイオディーゼル燃料を自分で精製しながら地球を一周するというプロジェクトをお手伝いさせていただいた縁もあって、アメリカ、アフリカ、ヨーロッパと順調に進み、道中連絡をもらって旅を見てきた。その旅の終わりが見えかけたところで私にメールが入りました。「バイオディーゼル精製に必要なエタノールが足りない」「ロシアまで持ってこれない?」という冗談半分本気半分の連絡・・
持っていくって、そもそもエタノール持って飛行機に乗れるのか??国内の協力者たちと残りのエタノールでどこまでいけるのか、他に方法がないのかやり取りをしているうちに思いだした。
パベルがいるじゃん!
今、山田さんがいる場所からパベルの住むチタ市までそんなに遠くない。ひょっとすると何とかなるかも。だめもとでパベルにメールを送る。1時間もたたないうちに返事が来た「すべて了解したよ!メールじゃ駄目だから山田さんの携帯番号を教えてくれ」やった!おーーーーっし!早速やり取りをするうちパベルと山田さんはパベルと無事合流して、エタノールからトレーラーの修理など言葉にならないくらいお世話になった。
その時の様子はここに詳しく書いてあります。

山田さんとパベル
人とのつながりの大事さを改めて考えた出来事でした。
うちのシートのユーザーが世界中に増えて行くのもうれしいですが、メール一つで動いてくれる友人が海外にいると言う幸せと、そんな自分が逆の立場になった時にはちゃんとお返しができるように心に余裕と感謝の気持ちを忘れないようにしていなきゃと思うこの頃です。

バイクシート 張替え 縫製

先ず、シートにカバーを張り込む前に当社では必ずしていること。
防水加工

これはウレタンの加工をして形状が整った状態。
ここまま表皮を張り込むと水が浸入した場合ウレタンがどんどん水を吸ってしまいます。

防水コーティングをしたところです。
独立気泡の発泡シートを接着剤で全面に張り込みます。
これで水はほとんど浸入しません。
しかし、ウレタンは空気の出入りがありますのでシートベースの空気抜きの穴はちゃんと確保します。そうしないと風船が割れるようにシートが破裂しちゃいますからね。裏側に穴があると水が入りそうですが、今までの経験で水没やよほど条件が悪くない限り水は入ってきませんでした。
ちなみに、この防水シートは厚さ約1mm。なので、張り込む前のウレタン成型でデコボコが残っているとそのまま表皮に出てしまいます。
柔らかいウレタンでデコボコ隠しすると楽なのですが、なんとなくあのふわっとした感触が好きではないので当社ではショーモデルなど以外には使用してません。
さて、表皮ですがカバーを作るにあたっていろいろと方法があります。
1枚で張る方法は置いといて、だいたい2枚や3枚などの繋ぎ合わせの立体縫製によって仕立てます。
縫い合わせのところで色々と化粧と言うのがいいのか分かりませんがステッチやパイピングなどでデコレーションします。

これは縫いしろを片方に倒して押さえるシングルステッチ。

こちらがダブルステッチ。

こうして断面図にすると両方の違いがわかりやすいですね。
シングルは片方に縫いしろが来るのでその部分のレザーの厚みが3枚になるので、場所によってはふくらみが出る可能性があります。一般的には同色の糸でステッチをかけますが、色違いでアクセントを付けることもできます。
強度的にどちらが強いかという質問を受けますが、ダブルも裏に補強の当て布を入れますので大きく強度の差は出ません。

これはパイピングです。糸で色違いのラインを入れるよりはっきりしますね。

パイピングも同色の場合が多いですね。
座面とサイド部分を色違いで張る場合などは、サイドの色と同色でパイピングを作ることが多いです。
同色でも色違いでもお客様の欲しい色使いに対応します。

これは座面にタックロールが入っていますね。
コレが入ると一気に重厚感が出ます。写真のように中央に配置して枠取りする方法もあれば、全体をタックロールにしたりと加工の幅は色々あります。ただし、タックロールをする場合は防水が完全できなデメリットもあります。

オフロードでは一般的ですがロゴのペイントもできます。(ロゴについてここに詳しくあります)
ビニールレザー用の特殊な塗料でペイントしますのでべとついたり、すぐにはげたりしません。

白 黒 シルバー ガンメタなどがあります。特に黒レザーで張り込んでガンメタでペイントをすると光の当たる角度で見えたり見えなかったりするので、ロードバイクやあまり目立つペイントはしたくないけど、ロゴが欲しいという方にはお勧めしています。

ロゴペイントのの後ろについているのがアルカンターラのタブ(タグ?)
アルカンターラを使用するときは、このアルカンターラ純正ブランドタグを取り付けることができます。

野口シートのタグですね。
とりあえず表皮についてはこんなとろでしょうか。
また思いついたら書きますね。

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