BMW R100GSパリダカのシート


前回の続きです。
前回は分解したところまでを書きました。

今回は仕上げまでを書きます。
とりあえず分解したシートをシートベースに接着して、タンクとの当たり面を合わせていきます。合わせると言ってもタンクが真ん中についていなかったり、シートベースの経年による変形とか色々難があるので、左右のバランスはある程度のところで納得することにします。
中古で購入したアンコ抜き加工されたシートは乗るつもりはないので、ライダー部とタンデム部の高さを決め、衝撃吸収材T-NETとオリジナルウレタンの積層によって増える厚み分を削ることにします。
ざっくり落とすときにはこの機械で、サーーーっと薄く少しずつ切り取ります。
ブレードが長いのでシート幅を一気に切り取ることができます。
積層する場合シートのサイドまでウレタンをまわさないと問題があるのでこのように角も大きく落とします。ここからさらに表面を慣らしていきます。
ちなみにウレタンの盛り方です。今回は真ん中の盛り方をしています。
この盛り方をするときにはサイドのウレタンの表面(スキン層)を必ず削り、最後の防水コーティングをしたときにはがれにくくします。
なぜ削らなきゃいけないかは長くなってしまうのでまたの機会にします。
これは自分のシートなのでざっくりやっていますが、お客様のシートを加工するときはこんな感じです。
高さや幅の加工前、加工後の寸法がお客様の指示通りかすべて管理しています。
お医者さんではないけれど、加工カルテは膨大な量を保管してあります。

加工が一気に飛んでしまいましたが作業に集中すると写真撮るのも忘れてしまうのでご勘弁ください。
ベースとなるウレタンの上に衝撃吸収材T-NETとウリジナルウレタンを交互に重ねて求める高さと幅に削りだします。
ノグチシートのオリジナルウレタンは、座り心地の性能もありますが加工においても仕上がりが綺麗になるウレタンを独自に製造しています。
ウレタンの削りが甘くて表面が凸凹しているのを柔らかいウレタンで隠すことはしません。それをすると乗り心地がおかしくなるんです。
ある程度形ができたのでバイクに取り付けて眺めたり跨ったりします。
この辺りは慣れたもので、理想の形状に一発で決まりました。
GSのシートは多少段付きがあったほうがかっこいいと、自分の場合はそう思います。
カバーデザインを考えるんだけど、結局これが一番無難なんですね。
サイドに赤を入れるかどうか、今のシートにサンプル片をあてがってみたけど、何かしっくりこない。同じ白では面白くない。悩むところです。
色を考えつつカバーの型取りができたので最後の防水加工です。
EVAのシートとシートにたっぷり均一に糊を付けます。
1枚で包みます。この貼り付けは職人技かなと自分でも思います。
ここまでの仕事はカバーを張ると見えなくなりますが、こうすることでカチッとした座り心地と快適な乗り心地になるんです。
結局色は全て黒にしました。
座面はウルトラスエード サイドはビニールレザーの2トーンです。
張り込みです。前のブログに書いたように8mmの針なんかでは打ちません。
6mmの黒塗り針を使っています。黒塗りだとかっこいいからです。
完成です。やはりサイドに白が入っていたほうが少し軽快な感じがするかな。
今までのよりライダー部を10mm上げて、タンデム部は10mm下げました。
良いか悪いかは自己満足の度合いだけなので、今回は前回よりもいいかなと思っています。
自分で言いますが、ここなんて、もうなんて美しい!
シート先端のベロ部分の厚みは極力薄くしてタンクからシートの流れを自然になるようにしました。
しかし反対側はタンクのずれやシートベースの都合でここまで追い込むのが精一杯。完璧を求めすぎるのも体に悪いんです。
ワンポイントで座面に同色でGSの刺しゅう。

見た目にカチッとしているというのは大事だと思います。
カチッ カチッ と何度もうるさいなぁと思われる方もいるかと思いますが、でもやっぱりカチッとしてることはとても重要なんです。
それと、シート屋なんだからとにかく作ることが大事で、たくさん作って、たくさん乗って、性能を上げていくことは基本中の基本だと思っています。
しかも、嫌々やってるわけじゃないので、きついどころか失敗しても次の意欲がわいてくるので今のところはこのスタンスで行こうと思います。

今回は10mm上げた分、シート幅も大きくシェイプしてシートの角のRを大きくしてみました。
雪の便りも聞き始めましたが、もう少し乗れそうなので新しいシートで出かけるのが楽しみです。

 

 

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