S2000を購入してから数年経過して、機械的なところはいろいろ手を入れてリフレッシュしてきたけれど全部人任せ。

仕事上シートを人任せにするわけにもいかず、せっかくやるなら、あーしてこーしてと考えているうちに時間だけ過ぎてしまった。自分の物っていつも後回しとか適当なものになったりして、その適当にイラついくから結局やらないということが多くなってしまう。
現状シートは写真で見ると破れてもいないしきれいに見えるけど、だいぶやれてます。だって走行距離はもうすぐ120,000kmだし、シートもくたびれるはずです。
そして、そもそも私は本革シートがあまり好きではありません。
夏は蒸れて汗かくし(パンチングレザーでも意味ないです)、冬は冷たい。表面は割れてくるし、硬くなる。それにつるつる滑るのもいただけない。
もちろん本革を否定するつもりはありません。ちゃんと良い物もあります。
とにかくS2000のこれはちょっといただけない。

表面はピカピカと光ってます。

昨年末に車検も通したし、まだ当分乗るつもりなので、重い腰を上げてS2000張替作業スタート!職人に「俺の車張り替えておいてよ!」なんてブラック会社の社長のようなセルフは吐けないので、今回は腕のいい当社の職人に頼らず代表自らすべての作業をして、職人に褒めてもらおう。たまには錆びついた腕も磨かないといけませんからね。

ちなみに私の作業場はこんな感じ。工場の一角で日々の作業を邪魔しないように私専用のミシンと刺しゅう機を置かせてもらって作業しています。個室ではないので丸見えです。
これはS2000を購入してすぐにシートの張替え用としてヤフオクで購入してあったS2000のシート。ずっとほったらかしでカビてました。これをバラバラにしてカバーを作ります。


縫製部分を全てほどきます。とても地味な作業です。シートの形に伸びて曲面が出ている部分も平面にならします。ばらしながら縫製の順番や、縫製時の工夫、張り込みの時にハサミを入れた場所などを確認。この作業でずいぶん得るものが多いです。
これが型紙になります。量産する場合は、これをもとに紙で型紙を作り、更には金型で生地を抜いたりします。
外からではそれほど多くないと思う縫製パーツも、シート1脚でパーツは50近くになります。それを全て型通りにハサミで切ります。
生地はもちろんウルトラスエード 座面と背面のセンターはノーマルにならってパンチングのウルトラスエードです。

背もたれは右左があるためパーツが混ざらないように気を付けます。
いくら気を付けても私は必ずやらかすんです。なので、1枚1枚に名前を書いておきます。
いよいよ縫っていきます。これは縫い合わせる前の下処理です。
ある程度形になってきたら仮張りをします。
ちなみにシートには刺繍を入れません。
刺繍を入れるとその刺繍に目が行き粗を隠すことができるのですが、今回はあえて粗が目立ってしまういばらの道を選んでみました。(イマオモウトイレテオケバヨカッタ)

しっかりと型が取れて、型通りの縫製ができていれば軽くかぶせただけで仕上がりが容易に想像できます。
いくら張り込みの技術が高くても、下手な型取りと縫製したものは仕上がりがいまいちになってしまいます。すべての技術が高くてやっと一流品と呼べるんだーーーーと、いつも言っている手前、叱られないようにものすごく時間をかけて作業を進めています。
と、こうした作業をしている時に「社長、来週から新しいパートさんが来るから、新しいエプロンに刺繍を入れてくださいな」と言われて、自分の作業よりも会社のことが優先なので、はいはい今すぐにとシートの手を止め刺繍。

新しい刺しゅう機もだいぶ私になじんできました。用事が終われば私の自由時間です。 さて作業に戻ります。
古いシートはカバーだけではなくウレタンも劣化しています。
乗り降りするときに潰してしまうところのウレタンです。
グズグズです。こんなふうになってしまったウレタンにいくら糊を付けてもウレタンどうしがくっつきません。なので、死んでいる部分を根こそぎ切り落とし、生きている部分に新しいウレタンを乗せて成形します。

これで大丈夫。
さて、すべての部品を縫い合わせてカバーが完成し、ウレタンの補修もできたので張り込みに入ります。

最近はあまり使われなくなったCリング。この年代の車だとまだまだたくさん使われています。この機械がないと張り込みは厳しいかな。
張ってはみたものの・・
うーーーん。
うーーーん
細かい皺が取れない・・。
チラチラと横で見ていた、釣り名人の職人が一言、これは社長の縫製が下手だな・・。

結局、職人は自分の作業の手を止めてお手伝い。忙しいのにすみません。
あーしておけばよかった、こうするべきだったと言いながら張り込みは完成。やはり職人、私の縫製をカバーする張り込みでパリッと仕上げてくれました。
と思ったけど
隙間が空いてるし。私たちの仕事は” 張り ” であり ” 貼り ”ではありません。
しっかり張って、皺無くパリッと仕上げるのが基本です。
しかし、引っ張りすぎてウレタンをつぶしすぎるとこうしたことが起きます。
よし!
おおおおおお!!!!
いいぞ!思った通りにいい!
車に乗せて走ってみたいのでさっそく取り付け
くぅーーーー
たまらん。
赤かっこいい!
シートの形状は変わっていないのに、ホールド感が増した感じがするのはウルトラスエードのおかげだろうな。
ちょっと引きで撮ってみた。こうなるとドアパネルも同じ素材で張りたくなるな。
当たり前だけど、隙間を直しておいてよかった。ヘッドレストのバックパネルもいい感じで収まっている。
粗が見えるのでアップは苦手だけど、プロが見てどうのこうのいうレベルなので問題ないでしょう。

そして
ドアも張替え

やはり、シートとドアの素材が同じだとさらにいいね。
張り替えて良かったーーー。自己満足は大事なのだ。
もちろんシートの張替えは随時受け付けます。
他の車種も可能です。
是非お問い合わせください。