Special seats for the 2023 DAKAR RALLY [HRC CRF450RALLY]


2023ダカールラリー用シートの製作が大詰めです。

その前にFIMクロスカントリーラリー最終戦となったアンダルシアラリーでベバレンが優勝しました!

さらにモンスターエナジー・ホンダ・チームとしてマニュファクチャラーズFIMクロスカントリーラリー世界チャンピオンの称号を獲得しました。
ライダーの年間チャンピオンはガスガスのサムでしたが、2位にはリッキーブラベック。

おめでとうございます。

世界一のチーム及びライダーたちと仕事ができていることに誇りを感じます。

CRF450RALLY
1回でいいからこれに乗って砂丘を越えてみたいなと思っています。
さて話は戻り、と言っても毎年恒例の投稿となっていますが、飽きずに同じ内容になりますが今年も書いて置きます。

HRCライダーのシートです。
こうして並べると違いが分かりやすいです。
リッキーとベバレンの形状はサイドが張り出したウイングシート。同じように見えますが微妙に違います。カバーの素材も全く別物になっています。
生地のグリップの強弱を色々試した結果です。

コルネホとキンタニラはノーマルっぽく見えますが、高さ、幅、角度まったく別物です。
どれ一つとして、金型で成形されたウレタンをそのまま使用したものはありません。
当然ながら中身はダカールスペックの構造となっており、衝撃吸収材T-NETもインストールされています。

こうした形状はホンダから図面で来ることもあれば、テストやレースの現場からライブで簡単な図面が届いたり、直接シートに書き込んで指示が来る場合もあります。
図面などは載せられませんが、指示の一例
ウイング部分のトップを前へ10mm前へ・・って、幅を5mm 高さをあと7mmとシビアな変更が逐次送られてきます。

こうした細かな対応ができるのもノグチシートだからと自負しています。
プライベーターは別として、KTM GASGAS HEROなどのワークスでここまでライダーに合わせたシートの装着は無いですね。
(もしやってるとすれば僕の認識不足です。ごめんなさい)
シートのオーダーができるよと言えば、どのライダーもオーダーするでしょうけど、チームにそのオーダーを聞くシステムが無ければ装着されているシートにそのまま乗るしかないですからね。
サスやエンジンのセッティングにプラスして、ポジションのセッティングの一つとしてシートは大きな役割を担っています。
シートによってライダーのポテンシャルが上がることを目指しているのがノグチシートです。
裏側の黒い生地はケブラー繊維の生地です。こうした処理も理由があってのことなのです。

写真には出せませんが、ノグチシートはシート以外にもマシンに装備する小物の製作もしています。軽く小さく安全にと言う工夫を凝らした小物の製作は出来上がると、とてもシンプルで誰でもまねができてしまうものなのですが、その形の理由が分からず同じものを作ると使えないものなってしまいます。
こうした仕事が田舎の小さな製造会社の生きていく一つの術ではないかと思っています。

2023は3回目の優勝目指して頑張ってほしいです!

 

 

2023ダカールラリーに向けて For 2023DAKAR Rally

 

2023ダカールラリーに向けHRCは既にテストや10月に行われるモロッコのレースに向け準備をしています。
新しいライダーも加わり、3回目のダカールラリー優勝に向かっています。

ノグチシートもHRCのシートをサポートして今年で12年目となります。

こうして世界的な大企業に混じって、テクニカルサプライヤーとしてシートの開発や技術提供を行い、今まで2回の優勝に貢献できたことは誇りに思っています。
社員数10人にも満たない会社がこうしたサプライヤー業務をするという事は、技術もさることながら、チームやライダーに対する「熱量」が非常に重要なウエイトを占めてきます。
単純な話、全然勝てなければどこかでお手伝いする気は失せてしまいます。
しかし、勝てなくても「勝つ気」が伝わってくると、勝てなくても意味は全く変わってきます。
2023の契約もしました。

野口装美は今年で53年が経ち、バイクのシート改造は私が手掛けて既に30年も経ちました。始めた当初と比べたら材料、道具、仕上がりどれもどこにも負けないという自負があります。
しかし、まだ足りないというのも事実。
世界最高峰のラリーのシートからは多くのことを学びましたが、まだまだ知らないことも多いのです。
ただ作るのではなく「勝つ」という「情熱」を維持したまま進んでいきたいと思います。

 

 

 

CRF230F シートなど色々

少し前に友人の誘いで険しい山遊びをしたときにセローを借りました。
これが思った以上に登り、思った以上に乗りやすくてこのサイズのバイクを探していたところ、友人が今乗っているCRF230Fを手放してBETA250に乗り換えるという話を聞いたので、じゃぁそれを貰いますという事でガレージにやってきたCRF230F 2003 ブラジル製
ハードエンデューロに出場や、その練習のために山で色々やっているバイクなので、プラスチックはブラックジャックのようにワイヤーで縫合してあったり、リアフレームの曲がりや各種曲がりや凹みなどなどなど・・

エンジンからの異音は全くなく始動性もすごくいいので、エンジン以外のところから分解整備開始。
バイクと一緒に貰ったリアのスポークセットがあったので張替え。
そのままスイングアーム、リアショックを外しグリスアップ。
フロントのステムベアリングもグリスアップ。
そうそう、このスタンドすごく便利です。キャスターがついているので移動できるし、高さの固定も3段階でできます。割と安定しているのでよほどのことがない限り転んだりしません。欲を言えばもう少しキャスターが大きくてスムースに動くと良いかな。
リアショックのバンプラバーが無くなっていたので、汎用品を入れて組付け。
実は保安部品のハーネスや社外品のメーター配線がなかなか手強くて、ハーネスのことは常に頭の隅にありつつ、他の作業をしていました。
とにかくバイクの整備しているだけで楽しい時間なので苦にはなりません。
しかも、お盆休みは前半はツーリングをしてきたけど、その後はずっと変な天気で、バイクで出かけることもできず休みの大半を結局ガレージで過ごしていた感じです。
あと、自分のシートは会社の営業が始まると作業スペースの関係で邪魔することになってしまうので、シートだけは休み中に必ずやる必要があります。
気になっていたシート後端の隙間。
まぁ予想通りというか、張り込みの仕方が悪い為にシートベースが変形してしまったようです。
シートカバーを張る!とYouTubeで検索するとだいたい「シート先端と後端をピンと張ってから全体を張る」みたいな説明が多いです。間違ってはいないですが、それが正解でもないです。
たぶんこのシートもそうやって張り込んで、しかも社外の沈み込みの大きいハイシートフォームを入れたので、激しく乗るたびにシートカバーが前後に引っ張られてどんどん大きく変形したのだと思います。
カバーをシートに張る際には、シートの部分部分で引っ張る強さの調節と、均一なテンションが大事かと思います。

先ずはシートベースを熱で元の形に戻します。
一心不乱にやっていたので途中の工程の写真がありません。
一応ハイシートの形状のまま、衝撃吸収材T-NETなどでダカールスペックにしました。
タンクとの当たり面はウレタンがへたっていた部分に盛って再成形。
全体が整ったら防水コーティングです。
張り込んだ時の写真です。
一部外車などではよく見る方法ですが、当社も例外はありますがだいたいのシートカバーはこのように裏側に伸縮縁巻きテープを縫製して張り込みます。
以前はカバーを固定するのにタッカーの針を隙間なくきっちり並べて打っていました。
しかし、並べて打つことでシートベースが割れたり、それ以外の問題も出たため現在はこのようにしています。テープがあることでタッカーの針はかなり少なくすみますし、少なくてもテープのおかげでカバーの引っ張りのテンションは一定に保たれます。それと、なにより仕上がりが綺麗です。
シートエンドもしっかり収まりました。



注文していたデカールも届いたので張替。
シートカバーは座面はヤマハ純正色のB-47 サイドはB-61

シートの青がデカールの青と会っていい感じかなと自己満足です。
ハーネスも必要ないものを省きつつ、保安部品も正常に動作するようになって、完成間近です。

乗るのも楽しいんですけど、こうしてガレージでいじってる時間も同じように楽しいですね。

 

 

XR600Rのシート

XR600
名車のうちの一つですね。私もずいぶん昔に数年乗っていました。
思い出深いバイクです。
機会があればまた所有したい1台でもあります。
そしてXR600と言えば
BAJA1000 のジョニーキャンベル
ホンダのコレクションホールにもあるBAJA1000マシン。
写真のこれは680ccに排気量アップされたスペシャルな1台。
そして、今回XR600のシート改造の依頼をいただいたオーナーからは「このシートのイメージで、ホンダレッドとウルトラスエードで」とのことでした。
早速届いたシートを分解します。
XRのシートはウレタンのスキン層が厚すぎるのか、それともサイドの立ちがきついのか、こういったウレタンの破壊が進んだものが多いです。
ひどいものになると、穴が開いて空洞ができてるものもあります。
このシートは硬いスキン層をすべて削り取ることと、T-NET+オリジナルウレタンでの再構成で問題なくよみがえります。

以前にも書きましたが、簡単に描くと、こういった盛り方になります。
今回はサイドを大きく削ってるので、上層の水色の部分はサイドの下部まで来ています。
このシートは少しアンコ抜きもされていたので、積層して盛ったことでアンコ抜きにありがちなフワフワした感じもなくなると思います。
削って低くなった高さを元に戻すため現状の高さを計測。
ここまでの作業写真がないのですが、計測後にT-NET+アンコ盛りの高さ分約25mmウレタンを削り取り、削ったところにT-NET+オリジナルウレタン+αを積層して成形していきます。
積層しては形を整えていきます。
これの繰り返しでシートができていきます。
全体を防水EVAシートで接着コーティングします。
これから、カバーの型取りをします。
ロゴは純正がいいとのことでしたので、シートからプリントデータを起こします。

そして完成。


XR,XLRのほとんどのシートはタンクとの当たり面のウレタンが経年劣化でおかしなことになってます。100点とは言いませんが写真で見る限りいい感じで収まりました。オーナーにも喜んでいただけました。

やっぱり600はかっこいいなぁ。